本日は、2016年6月9日木曜日である。
4学期制の福山市立大学の1学期末試験が本日終わった。やれやれ。これから135名分の採点だ。
ところで、みなさま!6月4日から全国で上映の『星籠の海』という映画を、暇な方はご覧ください!
「星籠」は「ほしかご」と読まないでね。「せいろ」と読んでね。「せいろ」でも「蒸籠」じゃないよ。それではシューマイになっちゃう。「ういろう」は名古屋ね。
映画の『星籠の海』の冒頭のショッキングな場面の次の場面に、大学の講義室のシーンが出てくる。ついでに、大学のキャンパスのシーンも出てくる。「都市経営学部」っていう表示も大いに目立って出てくるぞ。
その講義室は、福山市立大学の大講義室だ!唯一の階段教室だ。
「講義を熱心に聴いている学生たち」や「キャンパスにあふれる学生たち」は、うちの学生たちだ。私のゼミ生たちも出演している。
がははは~~~!!!
自分が働いている場所が映画に登場し、自分が知っている人々が映画に登場しているのを見るというのは、嬉しくも楽しくも奇妙な気分だ。
去年2015年の5月の連休にこっそり映画のロケが行われていたのである。
しかし、私ら教員は知らされていなかった。
なぜだ!?
くそ。
知っていたら、なんとしてでもロケ現場に潜り込んだのに。
あわよくばエキストラで映されたかったのに!!
映画初出演したかったのに!!
映画『星籠の海』は、知る人ぞ知る世界的に評価されているミステリー作家の島田荘司(しまだ・そうじ:1948-)氏が生み出した脳科学者&探偵の「御手洗潔」(みたらいきよし)シリーズの近作の映画化である。
島田氏は、福山市の御出身なんである。
備後福山藩の藩校を元にする誠之館(せいしかん)高校の卒業生である。
この高校の卒業生は、福山市立大学にもいっぱい入学している。私のゼミ生にもいる。
みなさん、島田氏のデビュー作と言いますか出世作の『占星術殺人事件』(1980)を読んだことがありますか?
なんで、あんな日本人離れしたミステリーを福山で生まれて育った人間が書けたのだろうか? 実に不思議だ。
島田氏は、純然たるトリック、頭脳戦みたいなミステリーを書く。
「貧困が彼女をそうさせた~~」とか、「復讐と怨恨がそうさせた~~」とかいう類の推理小説は書かない。
この「御手洗潔」という探偵は、1980年から活躍していて、1948年生まれの設定だから、現在68歳。でも、作品の中では永遠に若いままの30代前半である。
「御手洗潔」シリーズは、頭脳明晰で「強烈に感じの悪い傲慢な」御手洗さんが、トリックを解き明かしていく。どう見ても不思議な怪奇なオカルト現象を、ちゃんと現実的に説明をつけていく。
まあ、『ロシア幽霊軍艦事件』(2001)とか読んでみてちょーらい。ロシア革命と現代が交錯して、社会派でもあるし、トリック・ミステリーでもあるし、いろいろ楽しめるから。
残念ながら、原作『星籠の海』の面白さの30パーセントすらも、映画版『星籠の海』は伝えていなかった。
「御手洗潔」役の男優もうんざりだった。なんだよ、あれは?
原作の『星籠の海』は、福山で生まれて育った島田氏の福山への愛が詰まっている。
原作の『星籠の海』においては、幕末の国難と、現代の国難が交差して事件が展開する。
幕末の備後福山藩主の阿部正弘(1819-57)は、老中首座として黒船騒ぎに対処し、日米和親条約を締結した人物である。
30代で、そんなややこしい仕事に対処した。19歳で藩主になった大秀才だしね。
福山藩の藩祖は徳川家康の従兄弟の水野勝成(1564-1651)だ。「戦国時代の半沢直樹」と言われる人物だ。なんかイメージが浮かぶね。
だからして、福山藩は中国地方における徳川の最高の支店であると同時に、西日本全体に睨みをきかせていた。
この備後福山藩第七代藩主の阿部正弘こそ、薩長中心の明治以降の日本史においては、不当に無視され忘れ去られた幕末の救国の英雄なんですよん。
宮尾登美子氏が書いた(薩摩の)『篤姫』によると、この老中首座は政治のストレスと心労のあまりに「10代の若い側室と性交し過ぎて死んだ」ということになっている。
なんだよ、それは・・・
宮尾氏は、おそらく薩摩側の人間が書いた(捏造)資料ばかりを読んだのだろうねえ・・・
ほんとうは阿部正弘さんは暗殺されたんだろうな・・・
38歳くらいで、「やりすぎて」死ぬはずねーだろ。一層に元気いっぱいだろ。
実際の阿部正弘は、ものすごい秀才で、家柄問わず優秀な人材を結集させて、いろんな改革を遂行した。
NHKの大河ドラマの主人公になっておかしくない人物だ。
トマス・グラバーのパシリだった坂本龍馬より、ずっとすごいんだぞ。
阿部正弘は、薩長中心の日本の近代史において、かくも不当に無視されてきたんである。
同じく福山市も、明治以降は、福山藩主の阿部正弘の業績潰しの一環で無視されてきたんである。
そもそも幕末と明治維新にまつわる歴史には闇が多いのだ。
NHK大河ドラマの脚本家!!いい加減に、もっと勉強せい!!!
それはさておき、福山市の「鞆の浦」なんてのは、日本史において京都に次ぐくらいの重要な地点だったんだぞ。宮崎駿氏の「崖の上のポニョ」の舞台になっただけじゃないんだぞ。
そこが知りたい方は、原作の『星籠の海』をお読みください。
原作の『星籠の海』は、歴史好きな方々、瀬戸内海の水軍に興味のある方々にもお勧めの、ものすっごく面白いミステリーだ。
この小説においては、阿部正弘は、実は黒船と戦う準備をしていたという設定になっている。そのときの秘密兵器が、「星籠」だ。
この「星籠」は、水軍を味方につけた一向宗を蹴散らした織田信長の鉄板船を沈没させたという設定である。
その織田信長の鉄板船を沈めた秘密兵器が、幕末に甦り、黒船を撃沈するかもしれなかった。しかし、幸いに、このときは日米は戦争に至らなかった。
しかし、時は過ぎて21世紀。
福山市が、瀬戸内海の小島に本拠を置いた某韓国系宗教カルトに汚染されていく。このカルトは、福山市からどんどん日本中に汚染を拡大するつもりなのだ。
危うし、福山と日本!!
と・・・いろいろありまして、そこのカルトの教祖が、さんざんろくでもない犯罪を重ねた末に、瀬戸内海を船で逃げ、関門海峡を越え、対馬に向かい、半島に逃げようとする。
そのとき、幕末の国難を救いかけた秘密兵器「星籠」が甦る。
おおおお~~~~見よ、瀬戸内海と日本海にまたがる追跡劇を。
と、こういうストーリーなんざます。
あ・・・ネタバレしていいのだろうか・・・
島田荘司先生、申し訳ありません。
映画版『星籠の海』は、しかし、「幕末の国難と現代の国難が交差する」という、このミステリーの肝心要の部分を抹消させていた。
まあ、無理もない。
「某韓国系宗教カルト」は、まずいよな・・・
どこのカルトをモデルにしているか明々白々だもんな・・・
恐いよな・・・
恐い、怖い、コワイ、集団結婚はいや!合同結婚はいや!
壺なんか買いたくない!!
ともあれ、映画版『星籠の海』は、福山市立大学がロケに使われ、うちの学生さんたちが謝礼なしのエキストラとして大量に出演したという以外には、私にとっては意味がないものであった。
しかし!!
それでもDVDになったら買う。ほほほ。
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