本日は、2016年6月16日木曜日だ。
1学期の成績報告をすませたばかりだ。
すぐに2学期の授業が始まった。高温多湿の長い夏が来た。
ところで、今の私は、昨日の教授会で報告事項に挙げられたことのひとつが気になる。
最近、「自己啓発セミナー」を商品とする会社の暗躍(?)の手が福山市立大学にも及んでいるらしい。その具体的な会社名も報告された。
「就活の面接がうまくいく」とか「就職に有利」とか、そういう触れ込みで最初は600円くらいで、セミナーを受講できるそーだ。
で、そのセミナーが面白くて、どうしても次の段階のセミナーを聴きたい。それは1万8000円のセミナー。次の段階のセミナーは3万円の受講料。思い切って3万円出してみたら、次のステップのセミナーに進みたい。それは10万円……
その勧誘は非常に巧みであり、セミナー出席者はすっかり洗脳されるそうで、その鮮やか勧誘方法は、統一教会を彷彿とさせるそうである。
ということで、「カモ」さんは、どんどん高額なセミナーを契約するはめになる。ついには、総額45万円とかのセミナーを契約することになる。
後で「あれ・・・ちょっとまずいかな・・・」と思っても、契約成立後の解約交渉が大変である。
それで、福山市の消費者生活センターに相談や苦情が多く寄せられているそうである。
教授会終了後、私は、すぐに、その「自己啓発セミナー」を商品とする某企業のサイトを検索して、コンテンツをチェックした。
うさんくさい・・・
ものすっごく、うさんくさい・・・
私は、4年生のゼミ生にメイルで確認した。「大丈夫ですか~~?騙されていませんか~~?」と。
そしたら、学内の女子学生2人組からセミナーに勧誘されたとか、誰それがセミナーに出席してよかったとTwitterに書いていたとか、そういう情報を得た。
で、そのことをFacebookに投稿したら、これまた驚いた。
ある地方都市の市役所勤務の方によると、市役所でも住民サーヴィスの一環として、このような民間の「自己啓発セミナー会社」に委託して、セミナーを開催するんだそうだ。
なんで、そんなことを税金でするかといえば、成果主義が取り入れられて、役所もルーティンの仕事をしているだけではすまなくなってきた。なんか仕事していることをアピールしなければいけない。なんでもいいから企画して実行しなければいけない。
で、「いつも生き生き夢をかなえる人生の作り方」なんてセミナーが開かれる。
そんなセミナーに行くような暇な人々がいるのか??と思うけれど、いるらしい。
それから、驚くことには、このような「自己啓発セミナー会社」の最大の顧客は法人、企業なのだ!
驚いている私が世間知らずである。
Facebook友だちのおひとりは経営者なのだが、教授会で具体的に名前の挙がった「自己啓発セミナー会社」に委託して社員教育をしてもらっていると教えてくださった。
つまり、いまどきの若い社員は、家庭でも学校でも地域でもまともな教育を受けていない。読書もしない。
しかし、人手は必要なので、そーいう若い子も採用する。しかし、そんな社員をゆっくり育てている暇は企業にもない。だから、手っ取り早く、「自己啓発セミナー会社」に任せるのだそーだ。
で、「常に感謝すること」などを教え込むというか、「調教」してもらうのだそうだ。人生について、生き方についてなど、親にも教師にも教えてもらっていない「人生論ヴァージン」たちは、それらのセミナーの熱気と真摯さと、セミナーが伝える人生哲学に非常に感激するらしい。
その経営者であるFacebook友だちのおひとりは、これを「時短です」とおっしゃる。
なるたけ早く若い社員を戦力にするのに、「自己啓発セミナー」は非常に有効だそうである。
私は、ただただ一層に驚くばかりだ・・・
日本は、私が知らない間に、こういうことになっていたのであるか。
「自己啓発」といえば、私は20代半ばから40代後半ぐらいまで、「自己啓発本フリーク」であった。
めぼしい自己啓発本は、だいたい漁った。日本のもアメリカのも。
自己啓発本というのは、イギリスで生まれてアメリカで隆盛になり、アメリカの属国の日本に導入されたものであるからして、アメリカと日本の「自己啓発本」を読んでいれば、それで世界の自己啓発本を読んだことになるのだ。
と、強引に決めつけておく。
なんで、私が「自己啓発本フリーク」であったかと言えば、私は素直に幸福になりたかったからであるが、なによりもある種の「幻想」が「思い込み」が私にあったからである。
どういう幻想かと言えば・・・
この世の中には、成功とか自己確立というものに至る最短距離の道や方法があるのだけれども、それを知らないから、私はパッとしないんだわ・・・という思い込み。
さらに、人生には「二階級特進」みたいな、「ある朝目覚めたら全てがハッピーになってる」みたいなことが起きるんじゃないかという期待。
満塁ホームランみたいな瞬間があって、人生にも一発逆転があるに違いないという思い込み。
なにか未知な特別なことを実践すれば、それまでのパッとしない自分が光り輝くことになるという思い込み。
その魔法を知って得している奴がいっぱいいるのに、自分は知らないから損をしてるんだ!という思い込み。
で、そのような幻想と思い込みで一杯だった私が「自己啓発本フリーク」でなくなったのは、なにゆえか?
要するに「最短距離はない! 一発逆転はない! 魔法はない!地道な努力だけが信じられる!ダサいけどもね。ダサいけど、これが事実で真理だ!」と、骨身に沁みてわかったからだ。
「自己啓発本」読んでる暇に、もっときちんとした専門書を読もうとか思ったからだ。
であるからして、「自己啓発本」の類は古今東西さんざんに読んだので、私自身は「自己啓発セミナー」なるものに出席したことはない。
が、おそらく、その効果は似たようなものだろうな、読書もセミナーも。
あれはさ、軽い覚醒剤みたいなもんでさ。
当座はテンションが上がってやる気になるんよ。
なんか、私はなんでもできる!なんて気分になれる。
が、現実の人生は、日常の連続よ。
能力なんて、めざましく伸びない。
コツコツした地道な努力の蓄積の果てにしか能力の向上なんてない。
天才じゃない身にとっては、天翔ける能力なんて湧き出てこない。
もともとない能力を絞り出して、やっと出てくるのが能力。
お馬鹿な私は40代も終わりくらいになって、やっと気がついたんだよね。「最短距離はない! 一発逆転はない! 魔法はない!地道な努力だけが信じられる!ダサいけれども、これが事実で真理だ!」って。
「自己啓発セミナー」ぐらいで自分を変えることができるのならば、人生は簡単だ。as easy as pieだ。
「自己啓発セミナー会社」の社長さんや社員さんを詐欺師とまで呼ぶ気はないけれども、「幻想」を売っているだけのことなんで、「正業」とは言えない。まあ、でもそれはいいよ。この世の中、ほとんどの商売は幻想を売っているようなものなので。大学だって、似たようなもんだ。
ただ、一層に驚いてるのだ、私は。
その程度の「幻想」さえ、自分自身で紡ぎだすことができず、自分で噛み砕いて消化することもできない人々が増えているらしいということに。
他人が商品として売る「レディーメイドの既製品の幻想」で自分を支えるしかない人々が増えているらしいということに。
ただでさえ、メダカの学校みたいな画一的な人間が多い感じの日本は、さらに人生論哲学まで一様に染められて行くのであるか。
どこまで自分がないのか?自分だけが資産なのに。自分だけが資源なのに。
なおかつ、そんな他人が売る幻想は、すっごく高価なんだ。45万円???
そんなカネを「自己啓発セミナー」に支払うくらいならば、海外旅行でもするほうが、よっぽど実になる(と思う)。
「水源」、買いました。読みます!
いいねいいね: 1人
ありがとうございます!!
いいねいいね