本日は11月6日日曜日。
晩秋の日曜日っていいね。
大学教員というのは、まともな大学に勤務していると、研究休暇というか研修期間が半年なり1年間ほど与えられる。
無給でもいいなら2年や3年ぐらいなら休職して留学して学位をとることが制度的に許可されている大学さえある。
私も、前の勤務先の桃山学院大学勤務時代には、2000年10月から2001年9月いっぱいと、2008年度まるまる研究休暇をいただいた。
つまり、15年間の勤務の間の2年間は労働から免除されたことになる。長い有給休暇。
あれはほんとうに助かった。
もう日々の労働でヘトヘトで、このまま行くと大病になる〜〜癌になる〜〜心が病むうう〜〜と追い詰められた気分でいても、再来年は、もしくは来年は研究休暇だ……と思えば、頑張れたものだ。
アメリカの軍隊では、戦場に行った兵士は1年後には必ず休暇が取れる。
それといっしょ。
どんな激戦地でも、ちゃんとヘリコプターが兵士を迎えに来る。
1年後には必ず。
だから兵士は狂わずに自殺せずに1年を耐えることができる。
それといっしょ。
桃山学院大学では、いつ研究休暇が取れるかは2年前に審査で決定された。
これが、またいい策なんよ。
研究休暇が2年先にもらえると思えば、2年間頑張れるから。
研究休暇をもらえたことについては勤務先に感謝するんで、「愛社精神」が育まれる。
半年なり1年間の研究休暇期間に、たっぷり休養できる。
いっぱい充電できる。
どんどん勉強できる。
鋭気を養える。
正気になれる。
研究休暇終了後は、もっと真面目に働こうと思える。
怒涛の労働現場に元気に戻ることができる。
あの研究休暇期間は、大学教員になれたこと、そういう制度がきちんとある大学に採用されたことを、心から感謝した日々だった。
桃山学院大学に勤務できたことは、ほんとにラッキーだった。
あのまま勤務していれば、また1年間くらいの研究休暇を2016年度くらいには、取れたかもしれない。
ただし、それだけの好条件の職場だから甘くはないよ。
仕事は多かった。労働はきつかった。
40代から50代は、ほんとうに忙しかった。
体力的に気力的に、あの忙しさを継続できそうになかったので、2011年に福山市立大学に来たんだよね。
私は、サボって給料もらうには気が弱すぎるし、職場に申し訳ないと思うタチだからさあ。
ちなみに、今の勤務先の福山市立大学には、この制度はない。
有給の研究休暇制度を導入しようと市役所と折衝する最高管理職はいない。
今年の夏、まだ制度はできていないけれども、海外研修制度ができあがる突破口になるかもと思い、休職して海外調査に行きたいと申し出た同僚がいた。
でも彼女は退職せざるをえなくなった。
市役所の規定集では、実は、ちゃんと長期研修が規定上では許可されている。
希望者は1ヶ月前に勤務先に申し出れば、最高3年までは無給ではあっても留学もできるし海外調査もできると明記されている。
この規定があることも知らずに、ドタバタしてしまった教授会と管理職たち。
まさか、何事にも旧弊な福山市に、そんな規定があったとは。
もっとも、誰もその制度を利用したことがなかったらしいけれども。
私も知らなかったけどさ。
だって、もう辞めちゃうんだから、福山市の規定集なんか読むはずない。
ともかく、この件について、教授会は大揉めに揉めた。
ゼミ生を放置するのかとか、それでは学生の不利益になるとか、非常勤講師を探すのが大変だとか、年度途中に休職など言語道断とか、(私からすれば)実に瑣末な理由で、やいのやいのと彼女は責められた。
イギリス人教員など、「教育に勤しむべき身なのに、なぜイラクに行きたいのか?それでは福山市に貢献できないではないか?」と言った。
研究者でもないし論文なんか書いたこともない日本語もできない単なる英会話のセンセーなんかを大学に正規雇用するなよ、福山市!
どーいう見識だ?
いったいお前が福山市に何を貢献してきたのか!? よく言うわ。
事実として、研修自体は、福山市の規定集で認められている。
裁判を起こせば、大学の負けのケースだ。
しかし、彼女はしのごの裁判闘争をするのも時間とエネルギーの無駄だと、自分がしたい研究調査をしたいということでサッサと退職願いを出して、危険区域のイラクに発った。
残念なことだ。優秀な人なのに。
人材に逃げられましたわ、あそこ。
それにしても、不思議な大学だ。
実に不思議な教授会だ。
若い同僚たちこそ、研修とか研究休暇の制度ができれば、利益を得られる。
なのに若い同僚たちの多くが、彼女の休職に反対した。
休職してイラクに調査と復興支援兼ねて行きたいという同僚の希望を蹴飛ばした。
彼女を支持した同僚は多勢に無勢であった。
多数決により、彼女の休職は却下された。
彼女の休職に反対した同僚たちは、日々の労働がきつく、賃金は低く、研究条件は悪く、疲労が蓄積しているので、ただただ「自分だけ好きなことしやがって……」の気分になってしまったのですかねえ?
一丸となって彼女の背中を押して、 研究休暇を実現させるべきだったのに。
そこから制度化の可能性が生まれたのに。
そうしたら、自分だって研究休暇や海外研修ができるのに。
自分で自分の首を絞めたのが、わかってないわ。
はっきり言って、あいつら馬鹿だ。イモだ。ゴジラに潰されろ。
大学教員は、何にも邪魔されずに勉強だけに集中できる時期を確保されないと、教育サービス労働と大学運営の雑務に忙殺され、疲弊する。
ついには、ただの教育サービス機関のサラリーマンとなる。
そんな人間が、若い人の相手をしても、しかたないんだよ。
疲れて、ルーティンのことしかできなくなった教員なんか、若い人の邪魔にしかならんよ。
大学がつまらんってことは、授業や講義がつまらんってこと。
つまり教員がつまらんってことなんだから。
まあ、大学のふりしてるだけのところだから、そんなこと気にしなくてもいいというご意見もあるようですが……
それにしてもねえ……教授会の決定であれ、最高管理職の学長がOK出せば、彼女は休職してイラクに行けたのにねえ……
今の大学法においては、学長は教授会の決定に縛られない。
学長次第だ。
だけれども、教授会の決定を優先させた学長。
まっことに民主的ですな。
立派ですね。はい。
福山市立大学のように、有給の研究休暇制度がない大学も少なくない。
最近は、多くなっているらしい。
どこの大学も財政難だから、毎年1学部数人のスタッフに有給の研究休暇を享受させる余裕なんてないからね。
それでも若い人は、必死で業績を作って 、研究休暇制度が整った大学に逃げるべきだ。
でないと、あなた、脳が死にますよ。
と、ここまで書くと、「大学教員はお気楽なもんだな。そんな長い有給休暇がもらえて」とお思いになる方も多いでしょう。
あのねえ、僻んで、他人を自分の境遇と同じくらいに低い待遇に引っ張っても、益はないの。
みんなで貧乏に疲れきっても、しかたないの。
嫉妬しても、しかたないの。
ほんとうは、どんな教育機関でも企業でも、ある程度の期間を働いたメンバーは、3ヶ月とか半年とか1年間ほどの再学習研修有給休暇をとるべき!!
小学校の先生も、中学校の先生も、高校の先生も!!
大企業の社員も、中小企業の社員も!!
病院の医師も看護師も技師も!!
ただし、まあ、国会議員と役人は、高級公務員ですから、公僕ですから、休暇なしに働いていただきましょう。ほほほ。
何も生産できない職種だから、長期有給休暇なんかなくて、いいじゃないの。
あ、皇室の方々も超高級国家公務員ですね……
お疲れさまです。よろしくお願いいたします。
国防に従事する自衛隊の方々には、国家公務員でも、ほんとに働いてくださるので、休暇は特に手厚く!!
と同時に、すべての教育機関と企業と医療福祉施設の従業員に有給の長期研修休暇を!
8年に1度とか、10年に1度くらいは!
ほんとは5年に1度あれば理想的!
贅沢で非現実的?
いやあ、きっとそうなるって。
必ずそうなる。
あと何年かかるかな。
25年先ぐらいかな。
今は非常識で非現実的だと思えることが、当たり前のことになる時代は今までだって来たし、これからも来る。
激増しているという「うつ病」なんて、要するに原因は疲労の蓄積なんだからさあ。
あの電通の東大出の美人新入社員だって、彼女の上司たちが疲れ切っていなかったら、電通に殺されずにすんだのに。
彼女の上司だって、ちゃんと有給の長期研修期間をもらって休養できていたら、正気に返ることができて、新入社員にセクハラやパワハラやモラハラをしなかっただろうに。