[209] 元自衛隊幹部の方が語る北朝鮮問題

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本日は2017年9月20日水曜日である。

昨日の19日火曜日は大阪は梅田の阪急グランドビルの19階にある「関西文化サロン」に行った。

この「関西文化サロン」というのは、東京は銀座にある交詢社(福澤諭吉が設立した倶楽部)の関西版ということで、長く関西の、特に大阪の文化人や企業経営者の会員制の社交の場として知られてきた。

施設としては、会議室やラウンジやレストランがある。

きちんとしたコース料理をいただくこともできるし、ラウンジで、アラカルトで料理や飲み物を注文できる。会員ならキープしていたボトルのお酒を楽しみつつ歓談できる。

しかし、会員の高齢化などで、残念ながら2017年9月いっぱいでサロンは閉鎖される。

会員への入会費返還もすでに終了しているそーだ。

私の前の前の勤務先の桃山学院大学は、かつてはこのサロンの法人会員で、研修教授会など、このサロンで開催されたそーだ。

といっても、私が桃山学院大学に赴任した1996年には、すでに法人会員ではなかった。教授の何人かが会員であっただけだ。

個人入会費何十万円(交詢社は入会費50万円だそーだが、それより安いそーだ)で、年会費10万円(これは交詢社も同じ)くらいだからな、育ちのいい坊ちゃんが大学教授になった時代は過ぎて、奨学金で勉強して、自前では文献は購入せず、科研費でしか買わないという類のサラリーマン・プロレタリアート教員が多くなってくると、なかなかね……

ということであるが、幸いにも、桃山学院大学の研究プロジェクトのひとつ「21世紀の安全保障を考える」プロジェクトのメンバーが会員ということで、私も数回ほど、この「関西文化サロン」に行ったことがある。

会員制ってのは、いいよね。

不特定多数が出入りするところは、非常識な変な人間が混じるから、不快なことも起きるからね。

名古屋には、こういう会員制クラブのまともなんがあるのかなあ。

厚化粧のお姉さんたちが品のないオッサンの相手するクラブしかないかもね〜〜

「関西文化サロン」は、銀座の交詢社ほどには、ドレスコードもうるさくない。男性はネクタイとジャケット着用という決まりはない。

で、昨日は午後5時から、「21世紀の安全保障を考える」の研究会のプチ講演会が、「関西文化サロン」で開催された。

講師は、元空将の尾上定正(おうえ・さだまさ:1958-)氏である。

空将は、英語で言えば、Generalだからね〜〜将軍だからね〜〜

わざわざ千葉からレクチャーに来てくださった。ありがとうございます。

尾上氏は、「21世紀の安全保障を考える」プロジェクトの代表である桃山学院大学法学部教授の松村昌廣氏とは、ハーバード大学大学院留学当時から旧知の仲である。

その貴重なご縁で、「21世紀の安全保障を考える」プロジェクトは、自衛隊視察、基地や駐屯地訪問については、随分と尾上氏にお世話になってきた。

尾上氏のおかげで、このプロジェクトといいますか小さな研究会は、航空幕僚監部や入間基地に那覇基地、三沢基地、青森県内分屯地、小松基地、石垣島分屯地などを見学させていただいてきた。

この世の中は、「誰を知っているか」ということが大事なんですよね〜〜〜

おかげで、今年8月には私も滋賀県の今津駐屯地の戦車部隊を見学させていただいたのであった!

本物の戦車に乗せていただくことができたのであった!

尾上氏は防衛大学校卒で組織管理運営を専攻なさった。

卒業後に入隊した航空自衛隊では航空機整備の工学系仕事を担当なさった。

exchange officer system(将校交換制度)で、アメリカはイリノイの空軍基地で、米兵に航空機整備について英語で教えていらした。。

さらに、尾上氏は、「航空自衛隊で最初にハーバード大学ケネディ・スクール留学生に選ばれて」修士号を取得なさった方でもある。

すごいね。第1号だ。

ワシントン DCにあるNational War Collegeでも修士号を取得なさっておられる。

これだけの優秀な方なので、航空自衛隊千歳基地司令、航空自衛隊幹部学校長、統合幕僚監部広報官、統合幕僚監部防衛計画長、航空自衛隊北部航空方面隊司令、航空自衛隊補給本部長を歴任なさった。

2017年8月に退官なさり、今は千歳市文化大使をお勤めである。

数ヶ月後は某企業の顧問に就任なさる予定である(と書いていいんかな)。

自衛隊幹部の退職後の再就職先は、防衛産業顧問、保険会社顧問、企業の危機管理部門顧問が多いそうである。

なるほど。

尾上氏は、本来なら私などお目にかかって直接にお話できる機会など持てるはずのない、絵に描いたような自衛隊エリートである。

自衛隊でも、まだまだ少数の国際派である。

松村昌廣氏によると、「尾上氏は自衛隊の幹部のタイプとしては例外的である。あの方を自衛隊幹部の平均と思ってはいけない。防衛省も自衛隊幹部も官僚だから、閉鎖的な視野の狭いタイプが少なくないのが残念である」そーだ。

やっぱり……

で、昨日は、この尾上氏が「トランプ政権の対北朝鮮政策」についてレクチャーしてくださった。

立場上公開できないこともあるが、公開できる範囲でということで、お話していただけた。

尾上氏のレクチャーは4部構成だった。

(1)北朝鮮の核ミサイルの評価

(2) 北朝鮮の核・ミサイル開発と各国の思惑

(3)アメリカの選択肢と評価

(4) 日本のするべき事

ここでは、上記の(2)から(4)についてのレクチャー内容の要点のみを、フジモリ式にまとめて、ポイントフォームで紹介する。

(以下、尾上氏のレクチャー要点紹介始め)

(1) 北朝鮮の金正恩の目的は「現在の体制維持をアメリカに保障させること」であるが、核兵器を廃棄する気は全くない。そんなことしたら、アメリカに殺される。イラクのフセインのごとく、リビアのカダフィのごとく。

(2) 北朝鮮の核弾頭搭載ICBM(大陸間弾道ミサイル)は、宇宙から大気圏に再突入技術未完成ではあるが、来年中には完成予定であり、この保有宣言がなされると、アメリカとしては「外交交渉の機会の窓」が閉ざされる。

(3)国際社会は、随分と北朝鮮に譲歩してきたが、それはことごとく裏目に出てきた。

(4)北朝鮮はNPT(Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons 核不拡散条約)を遵守せずに、核兵器開発を極秘に開始。1994年にはIAEA(国際原子力機関)から脱退宣言をして使用済み核燃料からのプルトニウム抽出強行。

(5)1995年には、アメリは、KEDO(Korean Peninsula Energy Developmemt Organization 朝鮮半島エネルギー開発機構)を設立して、日本と韓国の無償費用負担で、核拡散の恐れの低い軽水炉2機と完成までの重油燃料を提供することによって、北朝鮮が保有する黒鉛減速型炉と核兵器開発計画を放棄させようとした。

(6)六者(6カ国)協議が中国を議長国にして、北朝鮮とアメリカと日本と韓国とロシアで、2003年8月に始まった。北朝鮮のすべての核兵器と既存の核計画の放棄、米朝日朝の関係正常化、北朝鮮に対する経済エネルギー支援、北東アジアの平和と安定を目標とした。

(7) しかし2003年1月に北朝鮮はNPT脱退宣言。2006年10月に北朝鮮は地下核実験強行。

(8)それ以降、現状維持が各国の一致した国益だった。

ロシアは緩衝地帯が必要。

中国は北朝鮮を刺激せずに配下に置きたい。北朝鮮には地政学的価値がある。北朝鮮崩壊の時は難民がなだれ込んでくるので難儀だし、北京も北朝鮮のミサイルの射程内であるのだから。

韓国は、文大統領は北朝鮮との対話路線。ほんとは南北統一したいが問題山積。

日本は核武装なしで北朝鮮に対処できないので手も足も出ない。

アメリカは極東にややこしい事態を抱えていられない。

(9)しかし、アメリカのこれまでの戦略的忍耐Strategic Patience政策は完全に失敗してきた。金正恩の驚異的な核実験・弾道ミサイル開発により、アメリカ本土への核脅威が現実化した。

(10)日本とかみたいな同盟国へならいざしらず、アメリカは、グアム、サイパン、ハワイを含むアメリカ本土への核の脅威は許容できない。

(11)このまま北朝鮮の核保有を容認すると、イランも核開発を主張するだろうし、ブラジルも主張し、じゃあ、うちも……と、どんどん核を持ちたがる国が増えて、核ドミノが起きる。アメリカが北朝鮮の核保有を認めて同盟国の日本を危機に晒して平気ならば、日本も考えざるをえなくて、日米同盟の危機となる。

(12) 「北朝鮮の核兵器使用による軍事行動を阻止する」ことと「北朝鮮の核開発、弾道ミサイル開発を放棄させる」ことと、「北朝鮮の金正恩政権を倒し民主的体制へ変換させる」ことと「朝鮮半島の完全な非核化を達成する」ことが、国際社会の共通の目的に見えて、各国の思惑がそれぞれにあり、対北朝鮮政策への足並みは揃わない。

(13)とりあえず、アメリカの選択肢は今のところ3つである。現状維持か暫定合意か軍事行動か。

(14)現状維持の場合、石油の全面禁輸等の措置がなければ北朝鮮の核ミサイルは早晩に完成する。よって、トランプ大統領は、これは採用しない。

(15)暫定合意は、北朝鮮のさらなる核実験・ミサイル発射の凍結と引き換えに、米韓軍事演習縮小し、金正恩体制の承認を受諾し、軍事行動を回避すること。佐藤優氏の見立てはそうである。

ただし、凍結の保証や確認は困難である。秘密裏に技術向上を図る可能性は大きい。

特にパキスタンやイランと協力するだろう。

そうなると、イスラエルは黙っていない。イランはイスラエルを地上から消滅させると宣言したのだから。この暫定合意はイスラエルが難色を示す。

(16)軍事行動をアメリカが採るのは、中国の介入を回避する取引が成立すればできる。そのためのトランプ大統領の11月訪中(ついでに訪日)であろう。10月に中国で共産党大会が終わるまでは、中国は決定できないから、11月。

(17)中国の「許可」が出れば、アメリカは奇襲的に核施設やミサイル保管庫への精密先制攻撃をする可能性が高い(ピンポイントでタングステンの100メートル棒を宇宙から発射して地下まで貫通させて基地と保管庫壊滅の「神の杖作戦」?)。

(18)この場合、第一撃の目標破壊見積もりが重要となる。

(19)北朝鮮の反撃を局限するために、北朝鮮のソウルを射程に置く火砲等を制圧する必要もある。

(20) 斬首作戦の可能性も残っているが、正恩だけでなく側近も処分しないといけない。

(日本の小説でも、自衛隊の特殊部隊が、日本初の女性首相の密命を受けて北朝鮮に潜入して、北朝鮮の非核化を遂げようと奮戦するのがあるね)

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(21) 日本は、日本として、日本の安全保障上アメリカに要求したいことをアメリカに要求すべきである。米中だけ、米と北朝鮮だけ、日本の頭越しの交渉で決められることに抵抗すること。西太平洋は中国に任すというような取引が米中間になされたら、日本は中国の属国になるだけである。主体的に日本の国益に立脚して、アメリカに要求すべきである。

(22) 日本政府は国民に事情を説明すべきである。そうすることによって、日本国内の調整を図る。法制化すべき点は法制化する。手続き上必要な手続きは早急にする。法の枠組みがないと、各省庁は動けない。自衛隊も動けない。

(23) 日本政府は、北朝鮮からのミサイル攻撃の危機を冷静に国民に伝え、ミサイルごとの対処法を国民ひとりひとりに周知させる。

(24)北朝鮮からミサイルで攻撃されてもミサイル防衛システムMDで対処すればいいという意見があるが、飛んでくるミサイルを撃ち落とせる確率は、ぶっちゃけ2割以下である。無理。

(25) 防衛費予算は5兆円にも満たない。お金も人材も武器も足りない。国内の防衛産業はすべて民間企業であり、予算縮小のために、民間企業の防衛産業部門も縮小しつつある。しかし、国産兵器のメインテナンスは民間企業の防衛産業部門が担ってきたのであるから、民間企業の防衛産業部門技術者に予備役自衛官の資格を出して、人材確保しないと、国産武器の維持管理もできなくなる。

(26)医療費を含めた社会福祉予算は35兆円であることに比較すると、安全保障の国防予算が5兆円にも満たないことは異常である。

(27) 政権要人に軍事状況のブリーフィングが始まったのは、日本版NSC(National Security Council)ができた2013年からであり、それまではいっさいなかった。まあ、日本政府は「日米合同委員会」の司令通りに動いていればよかったし。

(28)そのようなブリーフィングがなくても、かつては戦争経験のある政治家が多くて、皮膚感覚で国防のことを考えることができた。

(29)今の50代や60代の政治家には、ほとんど軍事問題を考える経験も素養もセンスもなく、また国防問題では票にならないので、政治家の仕事は選挙で勝つことしかないというのが実態であり、安全保障問題は関心を持たれてこなかった。だから、尾上氏が呼ばれてレクチャーする場が設定されることも多くはなかった。

(30) というわけで、ここまで北朝鮮問題は切迫しているのに、日本は政府も国民もリアリティを感じていない。自衛隊の訓練にしても、匍匐前進していると、太平洋戦争での実戦体験者に言わせると、「これだとみんな死にます」類のものである。しかし、上の判断、政治的判断が的確であれば、自衛隊は変わることができるし、有事に十分に対処できる。問題は上である。政治である。

(以上、尾上氏のレクチャー要点終わり)

うーん、内も外も大変な日本です。

日本国内の理解が、国会議員やメディアを始めとして、こうもうすらボンヤリと他人事ならば、いっそ一度くらいテポドンでもノドンでも、日本国内に飛んで来て墜ちて、被害が出た方がいいのかしらね。

パニックになるだろうけれど、「あああああーーー現実だ!!」と、いくら鈍い日本人でも目が覚めるかもね。

松村昌廣氏は、最近、The Japan Timesに寄稿し、「アメリカは日本とnuclear sharingすべきではないか?」と問題提起なさった。

https://www.japantimes.co.jp/opinion/2017/09/17/commentary/japan-commentary/time-nuclear-sharing-japan-drawing-near/#.WcJEltFcWf3

みなさま、もう終わったんです。

ボンヤリと平和ボケしていられる時代は。

どうしましょうか。

こんなこと書くと、ぶっ飛ばされるでしょうが、私は、いつ死んでも不思議ではない還暦を過ぎた状態で今の危機の時代を過ごせる幸運に感謝します。

これ、若くてさ、やりたいこといっぱいでさ、守るべき幼い子どもを抱えていてさ、そーいう状態で、今の危機の時代に生きているのは、とんでもないことだ。

無知蒙昧だからこそ、平気でいられるような状況だ。

以下の基本的なことについて、私自身は答えられるか?

憲法改正する?

私は改正すべきだと思う。

9条の2項を削除するべきだと思う。

2項は、戦力の保持を認めていない。いっさいの交戦権を認めていない。

はああ?

交戦権を認めていない憲法?

自衛隊を正規軍と位置づけてない憲法?

無茶苦茶だ。

もちろん、有事の際の指揮系統と対処について、きちんとマニュアル化する!

核武装について、するにしてもしないにしても、アメリカにnuclear sharing を求めるにせよ、しないにせよ、核武装の可能性について冷静に考える!

で、決断する。

Mutual Assured Destruction 相互確証破壊

まさにMADで狂っているけれど、核攻撃したら自国も破壊されることは確実なんで核は持っていても使えないということが、冷戦時からの「平和」の基盤だった。

第二次世界大戦末期の日米みたいに、この「相互確証破壊」が成立しない場合は、核攻撃される。

で、今の日本の問題のひとつは、米と北朝鮮間に「相互確証破壊」が成立したら、何が起きてもアメリカは北朝鮮を攻撃しないから、そうなると日本はアメリカの核の傘には入れなくなるので、日本は自前の核武装をしないといけなくなりますね、ってことだ。

どうしますか?

昨晩は、午後9時で私は、尾上氏に御礼を申し上げて、プロジェクトのメンバーに「バイバイ、またね」と挨拶して、梅田からタクシーで新大阪まで行き、新幹線で名古屋に帰ってきた。

平和な平和な梅田の賑わいと、新大阪駅の賑わいだった。

来年の初秋には、この北朝鮮問題はどのようになっているだろうか?

日本はどうなっているだろうか?

副島隆彦氏は、2018年4月にアメリカは北朝鮮の核施設を攻撃するであろうと予言しておられる。

第二次朝鮮戦争は、もっと早くに始まるであろうという意見もある。

国連でトランプさんは、アメリカは北朝鮮をtotally destroyする可能性ありと明言した。

その前に、アメリカが未曾有の大自然災害が襲い、そんなことやってられなくなるという予言もある。

うーん、これ、クレヨンしんちゃんに言わせると、「お股がスッ〜〜とする」状況だぞ。

(備考)

http://tanakanews.com/170920korea.htm

世界情勢解説配信サービスの田中 宇(さかい)さんによると、プーチンが北朝鮮を通過し韓国や日本に天然ガスを送るパイプを敷設することで、北朝鮮が外貨を稼げるようにして、今の問題を解決することを提案しているそーだ。

事実だといいなあ!上手くいくといいなあ!

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