本日は、2018年1月17日水曜日である。
23年前に阪神淡路大震災が起きた日だ。合掌。
来週の火曜日は午後7時から、三重大学工学部大学院での渡邊明先生ご担当科目「生産管理論特論2」において、なんかレクチャーせいという渡邊先生から指令をいただいた。
工学部の大学院生に何を話すんだ、私が……
いつものごとく準備は全くできていない。
どうするつもりなのか、私は。
今日は雨で、ついでに風邪だかインフルエンザみたいな症状もある。
こーいう状態から逃避して、久しぶりに『シン・ゴジラ』について書く。
あの傑作映画について実に面白いしリアリティがあると、私が思ったのは、以下のことだった。
非常時に対処しようにも、それらを想定した法の整備が日本にはできていない!
だから、国土が蹂躙されていても、有事立法が整備されていないので、法治国家の日本では、法的根拠の裏付けがなければ、警察も自衛隊も政府も何もできない!
『シン・ゴジラ』に私の心が鷲掴みされたのは、そういう国の仕組みの描き方のリアルさだった!
映画の登場人物たちは、まず、それに翻弄される。
閣僚も官僚も。
命令指令系統がややこしくて、合理化されていないので、有事の時には決断と対処に時間がかかり過ぎて、全てが後手に回る!
ゴジラが国土を蹂躙してやっと、あわてて臨時会議を開いて、政府は法律を通した。
それだけでも多くの時間が費やされてしまった!
自衛隊が出動できる法的根拠に、ゴジラ攻撃が該当するかどうか、まず、その議論から始めなければならない。
自衛隊がゴジラを攻撃するにしても、臨機応変な現場の判断ではなく、いちいち首相の許可が出なければ攻撃できない。
自衛隊はシビリアンコントロール下にあるので、自衛隊による判断や行動は法律違反になるから。
明らかに先制攻撃すべきなのに、専守防衛の自衛隊では、それはできない。
首相は逃げ遅れている老夫婦が巻き添えになることを恐れて、ゴジラ攻撃を中断した。
映画は、現場の自衛隊員が、自衛隊の上司に連絡し、その上司が幕僚に連絡し、幕僚が防衛大臣に連絡し、防衛大臣が首相に攻撃許可を確認しているプロセスを見せていた。
アホみたいなプロセスだった。
こんなときに、何やってんの?
やっとこさの連絡の末に、ゴジラ第三形態品川君攻撃を、首相は却下した。
いい子ぶりっ子したいなら、政治家になるなよ、もう。
憲法上では国民の生命は何よりも優先しなければならないのだから、これが正答なんですかねえ。
未来の1億2000万人の国民の生命と財産より、今現在の2人の逃げ遅れた老夫婦の生命が大事である。
これが戦後日本の正論。
で、品川君は東京湾に逃亡した。放射性物質を撒き散らして。
でもって、今度は米軍機の攻撃すら歯牙にもかけないゴジラ第四形態鎌倉君となって帰って来た!
で、とうとう東京を核熱攻撃の危機に晒した。
第三形態品川君のときに処分しておくべきだったのに。
すごい!
今までの日本映画で、有事立法ができていないがゆえに、危機に対応できず、さらなる国難を招いた日本を描いたものがあったであろうか!?
私は大感激した。
ところが!
ところが、あったんですねえ!!
有事立法なき日本の危機を描いた映画が!
2002年発表の『宣戦布告』だ!
原作は、麻生幾の『宣戦布告』上下巻だ。
原作者は、別のペンネームで映画版『宣戦布告』のシナリオも担当しておられる。
この映画版の方は、大晦日の晩に畏友の国際的安全保障学研究者で、元同僚の桃山学院大学法学部教授の松村昌廣氏より、教えていただいた。
松村教授、いつも貴重な情報をありがとうございます〜〜
「シン・ゴジラなんかより、ずっとおもろいので、この映画を見よ!」と松村氏から情報が来ても、大晦日は、おせち料理がわりの大量のおでんを作りながら「紅白歌合戦」を視聴するのに忙しかった。
だから、YouTubeにアップされた映画『宣戦布告』を視聴したのは、2018年元旦の未明だった。
見てぶっ飛んだ。
ええええええ??
こんな映画が制作されていたの!?
全然知らなかった!!
めちゃくちゃ面白いじゃないの!!
なんで、この映画についてメディアは沈黙していたの?
2002年当時は、メディアの安全保障への認識も、まだその程度であったのかも。
それにしても、この映画って、『シン・ゴジラ』と似てるぞ〜〜!!
いや、この映画は2002年発表だから、『シン・ゴジラ』が、『宣戦布告』の原作と映画を参考にしたんだ!!
『シン・ゴジラ』の元ネタらしきものは、あと2つほど私は知っている。
でも、この『宣戦布告』が、もっとも重要なネタだ!!
と、私は勝手に決めつける。
で、急いで私は原作を取り寄せた。
つーか、Kindleだと瞬間的に届くので。
原作は1998年に出版されているが、加筆版が2001年に出版されている。
私が読んだのは加筆版の方だ。
これが、また面白かった!!
非常に面白かった!!
この作品が書かれていた頃は、平和安全法制もできていなかった。
有事立法については、何度もその制定と施行の必要性が語られてきた。
が、有事を設定想定すること自体がけしからん!という論調が戦後日本の政治言論風土だった。
有事を設定するのは、戦争をしたいからだ、というわけだ。
また日本を軍国主義にしたいのか!と激しく非難されるのだった。
日本を攻めてくる国なんかないのだから、今のままでいいのだ〜〜!ということだった。
ところが、北朝鮮からミサイル発射とか、核兵器も持っているらしいよ、大陸間弾道ミサイルも一応は持ってるらしいよ〜〜安全保障上の危機でしょう〜〜いうことで、2012年に平和安保法制整備法に関する懇談会がやっと始まった。
で、2015年5月に審議が開始された。
まあ、共産党やSEALDsは「戦争法」と批判していたけれども。
でも、ともかく、「平和安全法制」は、2015年7月16日に衆議院で可決され、9月17日に参議院で可決された。
10月以降に、数人の国民や弁護士団体が平和安全法制は違憲だ〜〜憲法第9条違反だ〜〜と裁判に訴えたけれども、却下された。
確かに、日本に兵器を売りつけたいアメリカの軍産複合体が、北朝鮮と裏で手を結び、日本近海にミサイルを落としているのだろ〜〜-ビビって日本も韓国もアメリカから兵器を買うもんなあ〜でもって、アメリカの代理で日本は戦争に駆り出されるんだ〜〜そのときに自衛隊が動きやすくなるための法整備だ〜〜という説もある。
それはそうなのだろう。
アメリカの軍産複合体は、そう考えているに違いない。
だからといって、日本において、有事立法も平和安全法制も無用ということはない。
真実がどうであれ、どんな陰謀や八百長が背後にあれ、日本が他国から攻撃されない保証はない。
他国には他国の事情があるし、他国の首脳には彼や彼女自身の事情があるのだから、可能性はある。
『シン・ゴジラ』は、戦後の日本映画で初めてこの問題を扱った政治映画であると私は感激して、映画館に8回通ったのであるが、実は元ネタは『宣戦布告』であったか……
おおお……そうであったか……
見ればわかるって!
『宣戦布告』は、ほんとうに有事が起きたときは、有事立法が整備されていない日本ではこうなっちゃいますよというシミュレーション物語だ。
と同時に、『宣戦布告』は、公安の外事警察の活躍も描き、安全保障には傍聴活動や、戦争回避のために、あえてディスインフォメーションを敵に流すことも必要とされることを描くスパイ物語でもある。
日本はスパイ天国らしいからねえ……
『宣戦布告』は、福井県敦賀市の原子力発電所近くの海岸に北朝鮮人民共和国(映画では東北アジア共和国とかなんとか別の国名になってる)の潜水艦が座礁に乗りあげるところから始まる
乗組員は、敦賀市近辺にある4つの原発と原発関連施設の爆発テロをしかけに日本に侵入した。
地元警察は対処するが、敵を目前にしても発砲許可を警察幹部から得なければならず、その許可連絡を取っている間に、北朝鮮兵から殺害される。
やっとこさ治安活動ということで、派遣された自衛隊も、攻撃許可を得ている間に隊員は惨殺される。
首相は、やたら何でも自分が判断を下さないといけないので、ヒステリーだ。
こんな国難のときに、与党は派閥闘争を始めるし、野党は与党の脚をひっぱるだけだ。
防衛庁(2001年当時は、まだ防衛庁)の幹部は、法的根拠がないのに自衛隊を出動させれば、自分の責任になるので、ひたすら法律解釈を言い立てる。
公安の外事警察は、防衛庁幹部が北朝鮮のハニートラップにひっかかり、機密情報が北朝鮮にダダ漏れであることを突き止める。
防衛庁幹部と交際している水商売の女性が、その幹部のアタッシュケースに入っているパソコン保存されている機密情報をコピーして、北朝鮮のスパイのパシリの日本人に売っていた。
このように、上級国家公務員には、ハニートラップで売国している人は少なくないのだろうねえ……
国際機密情報ダダ漏れ日本だからね、日本は同盟国からも信用されないよね。
江戸時代末期に、シーボルトに日本国地図を渡した役人は切腹の上、お家断絶、墓まで暴かれたけれどねえ……
そりゃそうだろ……なんちゅう役人だ……
という具合に、物語は展開する。
これ以上は、ネタバレになるので書かない。
映画より原作の方が面白い!!
ところで、松村昌廣氏によると、平和安全法制だけでは不十分だそーだ。
まだまだ有事に対応できる法整備はできていないのだそーだ。
現実に有事が起きた時に対処できる体制にはなっていないそーだ。
各省庁間の調整もできていないそーだ。
えええええーー!!
麻生幾さん『宣戦布告』ってさあ、タイトル変えた方がいいわ。
『平和安全法制もっと整備しないと日本はこうなるよ』とか。
ズバリ、『戦争になったらこうなる』とか。
何だって想定しておかないと。
ということで、松村氏の近著も紹介しておこう。
中国脅威論もあれば、中国は平和を目指す論もあるし、中国張子の虎論もある。
まあ、なんでも想定して備えておくしかない。