本日は2018年10月6日土曜日である。
ずっとBlog更新をさぼっていた。
目を覚ました時に、しばらく眩暈がするという状態がずっと続いたので、ちょっとしばらく遊んでますかね、ということにした。
無職でも疲れる。
特に災害が多くて、ネット世界では、デマもフェイクもいろいろと駆け巡っていると、疲れる。
天岩戸ではないが、プチお隠れにならないと、精神の安定が保てない。
これから、引きこもることを「天の岩戸する」と言うのはどうか。
「武者小路のお嬢ちゃん、引きこもりだって」ではなく、
「武者小路のお嬢ちゃん、天の岩戸だって」と言う。
私は、軽く軽くネット断ちして、あんまり読書もしないで、ボケっと遊んでいた。
9月30日に開催された副島隆彦氏の金融セミナーも、東京から名古屋に戻る新幹線が台風で止まるということで、欠席した。
ちゃんと主催会社は、セミナー時に配布される資料を送ってくれた。
ところで、今日は、徒然なるままに、amazon プライムで視聴した政治映画について書く。
アメリカにHBOっていうTV映画製作放映専門チャンネルがある。
そこの作品で、まずはケネディ大統領暗殺後に副大統領から昇進しちゃったリンドン・ジョンソン大統領が公民権法を議会で通すまでの苦境映画All the Way (2016)を観た。
これが、すっごく良かった!
実にリアルな政治映画だった!!
Lyndon B. Johnson(1908-73) 大統領は、JFK暗殺後に副大統領から大統領になっちゃって、ケネディ路線を踏襲しただけという印象でスター性がない。
で、あまりドラマや映画の素材になることはなかった。
ところが、最近は再評価が著しいのだ!
2005年に発表されたジョンソンさんの伝記が良かった。
買って読もうかどうか迷ってる私。
ケネディは、南部の民主党員たちへの配慮という党の政治的判断で、ジョンソンを副大統領に任命した。
ジョンソンさんは、戦前のテキサスの師範学校(今はテキサス州立大学の教育学部になってる)を卒業し、小学校教師からキャリアを始め、民主党の下院議員に叩き上げた人物である。
しかし、エリートでいいカッコしいのケネディ夫妻は、南部出身のジョンソン夫妻のことは嫌いだった。
ボストン育ちの若いエリート夫妻は、野暮ったい田舎者ということで、ジョンソン夫妻のことを馬鹿にしてた。
最近になって、このTV映画と原作を同じにしたハリウッド映画LBJもできた。
HBOのTV映画版の出来が非常に良かったんで、ハリウッドも映画にする気になったのかな。
All the Wayの方が、主演俳優も良い気がするが……
All the way with LBJ「いつもジョンソンとともに」というのは、1964年の大統領選でジョンソン陣営が作った選挙運動標語だ。
1963年にJFKが暗殺されて、その後大統領になったジョンソンは、この選挙で大統領に選ばれないと、民主党が勝たないと、公民権法を成立させることができない。
口でいうのは簡単だが、こんな大きな法を議会で通過させるのは、強烈に大変なことだ。
公民権法Civil Right Act は、人種差別を撤廃させる法律だ。
それまでのアメリカでは、白人が使うトイレと黒人が使うトイレは別だった。
レストランも白人専用、学校も白人と黒人の共学はありえなかった。
バスは同じ料金を出しても、黒人が座席に座ってもいいのは、白人乗客が全て座っている場合であった。
普通選挙法が施行されても、黒人は投票に行けなかった。
アメリカでは投票権は登録制で役所に行って登録しないといけない仕組みだったが、役所に黒人が行って登録するのは実際は不可能だった。
特に南部では、役所で猛烈な嫌がらせを受けた。リンチにあった。殺された人もいる。
これをJim Crow Systemと呼ぶ。
このシステムをぶっ壊すのが公民権法だ。
JFKは、市民権法実現を公約に掲げて大統領になったけれども、暗殺された。
しかし、日本とは違うので、公約は守らねばならない。
JFKの意志を継いで副大統領から大統領になったジョンソンさんは公約を守らねばならない。
しかし、彼は人種差別のメッカ南部選出で友人の政治家たちも南部だ。
この友人たちが、公民権法は時期尚早と反対する。
彼らは南部の実態もわかっているし、黒人たちもアメリカ市民となる教養などの準備がないと言い張る。
一方、マーティン・ルーサー・キング牧師を代表とする黒人市民団体はジョンソンに迫る。
公民権法と投票権法(登録しなくても黒人の投票する権利を保障する法律)の両方の同時法制化を求める。
黒人はあまりに長い間苦しんできた。
第二次世界大戦でのアメリカの勝利は、黒人将兵の貢献あってこそだった。
兵役を終えた黒人たちは奨学金を得て高等教育も受け、人権意識も先鋭化されてきた。
しかし、ジョンソン大統領は公民権法と投票権法の同時法制化は難しいと思う。
南部選出の議員たちは、公民権法は違憲だと言い張る。
アメリカ合衆国憲法は自由を尊重する。
憲法が、誰を差別するなとか、公立学校は多人種でやれとか、そんなことを指示するものであってはいけない。国家が市民生活に介入してはいけない。
というわけで、大いにジョンソン大統領は苦しむ。
敵の共和党ばかりでなく、民主党からも反対の声は出る。
いかに正義だろうが大義だろうが、国会Congressで承認されなければ、法にならない。
(法制化されても、有名無実は多いけど)
映画All the Wayは、票集めや、議員説得、根回しなど、地味で泥臭い努力の末に、1964年の7月に市民権法を通過させ、大統領選をやっと勝ち抜き、さらに苦しみ、1965年に投票権法を通過させるジョンソン大統領の苦闘の様相をリアルに描いていた。
もうつくづく大統領でいることが嫌になるジョンソン。
引きこもってしまうジョンソン。
192センチの身長のジョンソンがベッドから抜けることができないし、独りでいると眠れなくなる。
自分のために献身的に働いてくれてきた男性秘書官が、公衆トイレで男性と性交していたというゲイ行為で逮捕された時は、大統領選が近いので、泣く泣く秘書官を解雇した。
たったひとつの身辺スキャンダルでさえ、命取りだ。
共和党に政権を渡せば、投票権法は議会を通過しないだろう。
JFKみたいなカリスマ性のある人気大統領と違うのだ、ジョンソンんさんは。
地道な議会対策を重ねないと、法案を通せない。
地道な選挙運動しないと、大統領に再選されない。
議員の票を得るためには、交換条件も出さざるを得ない。
あんたの州のダム開発に連邦から補助金出すから、賛成してよと、個人的に電話しなきゃいけない。
あのスキャンダル抑えておくから、賛成してよ。
狡猾にやらないと票を獲得できない。
目的のためには手段は選ばず。
修羅の道よ。
ジョンソン大統領は、まだ64歳で亡くなった。
50代の時の大統領時代の心労がたたったんだよねえ……
JFK暗殺の黒幕なんて言われてさ。
まあ、ジョンソンさんは、アメリカの愚民が嬉しがるみたいな容姿でもないしねえ。
悪役が似合う容姿だからねえ。
トランプさんみたいに華麗なマフィアの親分じゃなく、陰険な黒幕って感じだもんね、ジョンソンさんは。
いやあ……綺麗事じゃない。
支持者と言っても、気まぐれで、物の道理なんかわかっていない。
無責任に無思慮に批判するだけだ。
ひょっとしたら、ジョンソン大統領だったからこそ、公民権法も投票権法も成立したのかもしれない。
ケネディ大統領に、こんな泥臭い議会対策ができたろうか?
あそこの兄弟は、そろってジョンソンさんを馬鹿にしてたけどさ、この兄弟の父親がロクでもないから、JFKは、生きていてもダメだったかもね。
目と目が離れている小型犬みたいに愛らしい奥さんジャクリーンさんは、可愛いだけでケネディ大統領を支えるなんて無理だったろうし。
この映画を見てから、小室直樹氏のこの本を思い出したので、再読した。
やっぱり面白かった。
1995年に出版されて、2012年に再出版されたものだ。
この『政治無知が日本を滅ぼす』は、政治的道徳と小市民道徳は違うってことが、歴史的実例を元に論じている。
ボロクソに言われてきた類の為政者たち、始皇帝やネロや煬帝(ようだい)や武則天やヘロデ王やヒットラーや田中角栄などの、政治家としての有能さが論じられている。
いや、読んでみてください。すっごく面白いから。
小市民道徳で、ギャアギャア政権批判をしてる人々が、FacebookやTwitterにも多い。
けれども、「いい人」に何ができるんかしらん。
いろいろ気にしてたら、できないことの方が多い。
ジョンソン大統領が、小市民道徳的に「いい人」だったら、公民権法も投票権法も議会を通過しなかっただろう。あの1964年や65年時点では。
弁舌爽やかな、カッコいい、綺麗事ばかり言って、地道な努力しなくて、泥を被らない人に、具体的な議会対策なんかできない。選挙資金を集めることができない。
女性政治家でも、ほんとにクリーンな人物なら、何もできないよ。
ただのお飾りだって。
万年野党の陣笠議員だよ。
私はさ、あの民進党だか立憲ナンタラ党だか知らないけど、若い弁護士のお兄さんと不倫した秀才の女性衆議院議員が不倫しても、別に構わんかった。
ただ、堂々と、「私の下半身の要求なんか、どーでもいいじゃないですか。政治家としての私がすることで判断してください」とあの人が言えばファンになった。
しかし、政治後進国の日本では、そう言えないよね。
不倫したくても、ブスで貧乏でもてないから、慎ましく主婦やってます〜〜っていう選挙民が頭に来るよ。
私なんか、やっぱり政治家になるような女性は、ホテルで何戦もしてから、議員会館で資料を読み、取材に行き、国会の委員会に出席できるんだから、すごいなあ〜〜と感心する。
が、不倫相手の男の住居でするのはケチだぞ、お前。
そーいうケチな公務員根性はやめれ。
シティホテルのスイートでやれ。
ほんと、政治家に男が何人いようが、女が何人いようが、いいんですよ。
大きく見て、日本が経世済民になっていれば、いいんですよ。
まあ、小室直樹氏も書いておられるように、政治は結果が全て。
結果って、渦中にいる人にはわからないよね。
つまり、同時代人には同時代の政治家の評価ってできないかもしれない。
あの中曽根康弘さんが、実は名宰相だと評価される時代が来るかもしれんとよ。
なんか同時代人にはわからない類の政治的偉業をしたのかもしれんとよ。
同時代人には信じられないですが。
ということを考えさせる政治映画All the Wayと、『政治無知が日本を滅ぼす』でありました。