[378] 桶狭間に行った(前編)

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本日は2019年5月14日火曜日だ。

やらなきゃいけないこといっぱいあるのに、サボって好きなことしてる根性は66歳になっても治らない。

今日は、先日の日曜日12日にノルディックウォーキング散歩するなら、桶狭間に行ってみましょ、ということで桶狭間に行った話を書く。

長いので2回に分けます。

桶狭間は自宅から自動車で40分ちょっとであります。

桶狭間の戦いの桶狭間は、名古屋市緑区と豊明市に渡ってある。

有松絞りで知られる有松が近い。

大高緑地公園にも近い。中京競馬場にも近い。

どうして急に思い立って桶狭間に行ったかといいますと。

何となくやる気が出なくて、時間の無駄だからこそサッサと済ますべき家事もサッサカ手早く済ませることができないときがある。

そういう時は、動乱時代を舞台にした小説を読むといい。

特に、戦国時代末期とかを描いた小説がいい。

ボケっとしてるときに喝を入れてくれる。

ああ、人間の社会ってこんなもんだよね〜〜今も昔もさあ、裏切り謀略あたりまえで、情報収集して、雌伏しつつ機会を狙い、とにかく生き残っていくんだよね〜〜

世界はずっと戦国時代だけれども、日本だけ勘違いで洗脳されて1960年代くらいから「平和絶対みんな仲良く」で生きてきて、テキトーな喧嘩の方法も忘れちゃったんだよね〜〜

それでも冷戦終了後の1990年代からジワジワと世界基準の戦国時代要素の現実が入り込んできて、2019年はかなりの戦国時代で現実的になったんだよね〜〜

それにまだ慣れていない日本人の不幸感が大きくて、Twitterでは愚痴と呪詛と泣きばっかりが充満してるんかなあ〜〜

死ぬまで闘争だ〜〜老若男女LGBT関係ないよ、生きることは闘争だよ〜〜だから面白いんだ〜〜

と、あらためて教えてくれる。

といっても、司馬遼太郎さんのとかは大人になると読めない。

高校生ぐらいなら面白いけれど。

社会の描き方に、経済や政治の観点が薄過ぎ。

社会の下部構造に言及してくれないと。

インフラストラクチャーに言及してくれないと。

キャラクターの魅力で世の中が動くわけじゃないから。

カネ、モノ、情報だから。

やはり、その点でも、津本陽(つもと・よう: 1929-2018)氏の『下天は夢か』全4巻がいい!

この小説は1980年代終わり頃に『日本経済新聞』に連載されていた。

単行本になってから買って読んで感激した。

経済センス抜群の、実に有能な政治家であり軍略家でありCIAの長官みたいな信長像が描かれていた。

再読しよう!

でも、その本4冊が書棚に見つからなかった……

この10年間で転居3回やってるからね、処分しちゃったんだよね。

まったく、もう……

じゃあ、太田牛一(おおた・ぎゅういち: 1527-1613)の『信長公記』(しんちょうこうき)の現代語訳版を読むか、と思って探したら、それもない。

Shitshitshit!

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しかたないので、Kindleで『下天は夢か』も『信長公記』も、ともに買い直した。

電子ブックなら、クラウドの中に永遠よね。

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織田信長系小説は、これが最高。

辻邦生(つじ・くにお)の『安土往還記』みたいな、いかにもおフランス文学研究者らしい綺麗事のお美しくご清潔な中編小説もいいけれども、

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史実を読みやすく丹念に淡々と重ねていく『下天は夢か』のリアルな感じは最高。

ファンタジーほとんどないから。

合戦場面なんか容赦ない描写です。

血や内臓の臭いも屍臭も便臭も言及してあります。

生ゴミの腐った臭い以上の臭いだったでしょう……

剣の動かし方、首の斬り方、生々しいです。

戦国時代は、討ち取った敵の首は全部並べて吟味したんですよおお……

500でも1000でも……

これは誰、こっちは誰って、記録取ったんですよ……

首の切り口にはお米の粉をまぶして……

地名もきっちり書いてある。現在ではどの地域かも書いてある。

『下天は夢か』の前半の舞台は、尾張や美濃が舞台だから、当然に私の知っている場所や行ったことがある場所が多く言及されている。

だから、私的にはイメージもつかみやすい。

その地に、私の先祖たちも生きて蠢いていたに違いないのだから。

昔の津島平和町で今の稲沢市にある勝幡(しょはた)城か、今の名古屋城二の丸あたりの那古野(なごや)城か、信長の生まれた場所は、ほんとは未だによくわからない。

でも、よく私がウロチョロする大須には、織田家の菩提寺の万松寺(ばんしょうじ)もあるし、総見(そうけん)寺もある。

まあ、元の場所から移転してきてるけど。

この『下天は夢か』のタネ本のひとつである信長の家臣だった太田牛一の『信長公記』は、名古屋市北区の成願寺(じょうがんじ)で書かれた。

このお寺も私は知っている。

ただし、このお寺も元の場所から移動してきてるけど。

私が、最初に正規雇用で勤務した岐阜市立女子短大は、金華山(旧稲葉山)の近くにあった。

勤務先の行き帰りには、山の頂上にある岐阜城(稲葉山城)を、よく仰いだものだ。

織田信長の城の近くで働いてるんだ〜〜わたし〜〜という感動よ。

『下天は夢か』が評判を読んだのは、「織田信長が名古屋弁で話してる」ということだった。

「とろくさあいこと言っとんてかんわ!」

「それこそ、敵の思うツボだぎゃあ」

「おお、猿、やっとかめだなも。もちょっとこっちへよりゃあ」

「おお、やろまいやろまい」

まあ、こんな調子。

「織田信長が名古屋弁で話してる」ことは、すごく斬新だった。

だって、そりゃそうだがね。

織田信長は尾張生まれの尾張育ちだから、名古屋弁で話していたに決まってるがね。

でも、それまでの織田信長系小説に、名古屋弁で話す信長が登場したことはなかった。

今の河村たかし名古屋市長みたいな物言いをする信長が登場したことはなかった。

豊臣秀吉だと名古屋弁でもいいんだけど、織田信長は似合わないから。

名古屋弁で話す信長を描いた作者の津本陽さんは、江戸時代の名古屋の上町言葉(名古屋城周辺の武家屋敷町で使われていた言葉)を参考にして、戦国時代の尾張の人々の言葉を創った。

江戸期の侍言葉と戦国時代末期の信長や家来の言葉に大きな違いはないはずということで。

座頭市シリーズで知られる俳優の勝新太郎(1931-1997)さんが、この小説が好きで、この信長像を演じたかったらしい。

津本陽さんとの対談で話しておられたよ。

ちょっと……イメージ違うが。

斎藤道三なら、ぴったしかな。

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まあ、名古屋nativeの私からすると、ちょっとこういう言い方はしないけどなあ、と思う箇所もある。

でも、私がガキの頃の老人たちは、おおむね、ああいう物言いをしていた。

「こっちへ持ってきてちょうだあいすか」

「仲ようしたってちょうだあい」

が、名古屋弁で話す織田信長は、やっぱりなんか泥臭いのかカッコ悪いのか、この小説は、私が知る限り映画化もドラマ化もされていない。

まあ、史実どおりでファンタジー要素ない小説だから、映画にしにくいということもある。

読む方が絶対に面白いもんね、この小説は。

私は、だいたいが戦国武将つーたって、織田信長しか興味ないから。

織田信長の苦闘激烈な人生の軌跡を読むと、ほんと、すごい人物だと思う。

尾張の那古野から清洲、清洲から小牧、小牧から稲葉山(岐阜)、岐阜から安土へ。

こう書くのは簡単ですけどね。

もうこの点と点の間を埋めていく作業の夥しくも困難なこと!

尾張の中小企業の若い跡取りドラ息子が、日本一の大企業を作り上げたようなサクセスストーリー以上の大大事業を、たった一代で50歳前に達成したんだから。

武田信玄や上杉謙信や将軍や朝廷や比叡山延暦寺や石山本願寺やイエズス会を向こうに回し。

単なる短気の人間にできることじゃない。

単に強運だったからできることじゃない。

織田信長って、名古屋的に見えないけれど、実はすっごく名古屋的だ。

見栄や虚栄よりも実質本位の合理性。

信念とか宗教とか思想なんか知りません的なファンタジーは無視するリアリスト。

根っこにある派手志向。

新し物好きの好奇心。

簡単に他人も親族もシステムも信じない粘り強い知的な猜疑心。

現代名古屋人って、しょうもない脳が腐ってるみたいな小利口小賢しいイメージです。

それ事実よ。そういう奴多いよ、ほんと。

でも、それ、ほんとの名古屋人じゃないから。

どうせ他所から来た連中の子孫だよ。

とにかく、織田信長は、ガキの頃から私の歴史アイドルだから。

豊臣秀吉も徳川家康も関係なく、織田信長だから。

だから、『女信長』とか『信長協奏曲』とかの超駄作はムカつく。

NHKの大河ドラマの信長役の俳優にはほとんど、ムカつく。

特に、あの俳優にはムカついた。

その俳優は、「私がオバサンになっても」ミニスカート履いてるアイドルさんのご主人だそーだ。

知るか、そんなもん。

なんで、あんな下品なチンピラが演じるんだ!!

絶対に許せない!

ということで、私はその大河ドラマを視聴するのやめた。

NHK、いい加減にしろ!!

ところで、体調が悪かった私であったが、『下天は夢か』の第3巻冒頭の比叡山延暦寺焼き討ちぐらいまで読み進んだ頃には、元気が出てきた。

で、とりあえず、今日は「桶狭間」まで行こう!ということで、先日の日曜日に行ってきた。

なああんんと、私は名古屋人のくせに桶狭間行ったことがないのよね〜〜

しょうがないよ、無駄に忙しい人生だったのよ。

名古屋人なのに名古屋城行ったことない人間だっているんだからさ。

京都生まれで二条城に行ったことない人だって、いるんじゃないの?

私の知ってるアメリカ人でニューヨークに行ったことない人って結構多かったぞ。

そういえば、副島隆彦氏が、2014年の「学問道場」の「今日のぼやき」において、桶狭間訪問記を書いてらしたな。

あれも非常に面白かったです。

ちょっと読んでみてください。

あ、会員しか読めないかな!

http://www.snsi.jp/tops/boyaki/1769

今日は、ここまでです。

9件のコメント

  1. 藤森様
    こんばんは!
    「テキトーな喧嘩の仕方も忘れてしまった…」
    その通りだと思います。

    私も信長ものは、津本陽氏の“ 下天は夢か ”でした。
    もうかなり昔でしたが、信長本は、この著書が一番良いと思います。以前、急に読みたくなり探したのですが、全4巻中、第1巻だけ見当たらず…
    かと云って、また買う気もせずでした。
    やたらと乱雑している本の中から探す気もせずに断念しました。
    またも、思いもよらぬ“ 名 ” を見られまして嬉しかったです。いつも良い記事をありがとうございます。

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  2. 生きる塾さま:

    コメントありがとうございます。やはり、信長ものでは、津本陽氏のものが最高ですね!

    歴史小説もいろいろありますが、やはり具体的に兵站とか経済システムとか、平安時代からの荘園制度がどのように崩れていき、豪族たちが群雄割拠することになったのか、書いてあると嬉しいです。まあ、漢字が多くて、サッサカ読めないのでありますが。まあ、第2巻からお読みになっても、面白いと思いますよ〜〜

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  3. 冒頭だけ、うろ覚えですが、名古屋城ニの丸御所の臥所で目覚めた信長が、寄居の者に気付かれぬように部屋の隅に寄せ、その所作が人の心は信用出来ないとする戦国大名の日常であると初めて知った記憶が残っています。
    最初から緊張感溢れる文脈でした。
    やはり、もう一度読みたくなりました。
    続けてコメントしてしまいましてすみませんでした。

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    1. 生きる塾さま:

      そうそう、非常に緊張感がありますね。ほんとうに孤独なんですよね。人質は串刺しで殺されるし。文字通り串刺しですよ……

      日本経済新聞に連載されていた頃は、バブル期でビジネスマンの人々は身につまされつつ読んでいたのでしょうね。表面の残酷さを取れば、同じだなって。

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  4. 藤森様
    そうでした。当時、日経に連載されていました!
    思い出しました。… バブル全盛の頃で、私もまだ東京におりました。
    “ 串刺し焼死殺 ” でも、その表現たるや…口から肛門に貫かれ!!… やら、足利義昭は、見るに耐えず吐きけをもよおし真っ青になりながら座を立つ中で、信長は目を閉じる事無く串刺し焼き殺される最後まで見つめていた… などなど、本当にリアルでした。
    また、そんな信長の干からびた土の様な荒む心を癒やすため、赤児の如く吉乃の乳に貪りつく様など、津本氏の文脈には驚嘆され圧倒されまくりでした。…
    思えば長らくこうした緊張感のある文章に出会えていない気がします。
    信長で思い出したのですが、前回お話しさせて頂きました、勝先生や、安藤様との出会いは、仲代先生の主宰しておられます、無名塾の関係で、お話し出来る機会を得た次第です。
    読み直し、確認もせず書き殴ってしまいました事お許しください。
    また次回も楽しみにしております。

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  5. 生きる塾さま:

    ひょっとして無名塾にいらしたのですか?すごいですね〜〜無名塾出身の俳優さんが活躍していた時期がありましたねー

    ともあれ、歴史小説もいろいろですが、私としては、やはりリアリズムに則ってもらいたいです。ファンタジーは、やはりお子様向けですよね。

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  6. 藤森様
    こんにちは!
    仰る通りです。歴史ものこそリアルであって欲しいものです。
    私は、所属事務所こそ大手でしたが、売れないミュージシャンでした。笑 (無理やり武道館までは演らされました)
    事務所側も商売ですので何とか売れるように考えます。
    そして、ある時、大河ドラマ出演の話をされたのです。長くなりますので詳細は割愛させて頂きますが、舞台稽古のため無名塾で稽古をつけて頂く運びとなった次第です。
    所属していた訳ではありません。
    今では、本当に良い想い出となっております。

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      1. 藤森様
        はい。
        お恥ずかしい限りです。苦笑
        しかも、大した台詞もない端役でした。笑笑
        本当に恥ずかしいのでこのあたりで…

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