本日は2019年5月24日金曜日だ。
本日の名古屋の気温は摂氏32度である。
高温多湿が苦手な私にとって苦手な季節が始まる。
自宅が入っている集合住宅は、9月まで大規模大修繕期間である。
ベランダのもろもろも塗装し直すってんで、今週に入ってから、南向きのベランダの床と窓には、ずっとビニールが張られていた。
だもんだから、閉塞感がハンパじゃなかった。
プチ牢獄の囚人気分だった。
でも、やっと本日の夕方で作業完了。
自由に窓を開けることができるし、窓から風や光が入るし、外の景色が見えるって、素晴らしいことだ!
あたりまえって、素晴らしいことだ!
今日は、1978年版田宮二郎さん主演『白い巨塔』と2019年版岡田准一さん主演のそれを比較して思ったことを書く。
ご存知、山崎豊子さんの全5巻の原作のドラマ化だ。
作家の山崎豊子(1924-2013)さんは、日本のアイン・ランドです。
骨太の社会政治経済小説を描いて凄い。
登場人物の描写が類型的とか底が浅いなんて、どうでもよいのだよ。
この小説のドラマ化や映画化の啓蒙効果はすごかった。
大学病院の内部とか、医薬業界の癒着とか、患者のことを忘れた医療行為の実態とか、医療訴訟のやり方とか、一般によく知られるようになった。
セカンドオピニオンとか、インフォームドコンセントとかが、当たり前のことになった背景のひとつが、この小説のドラマ化だった。
「真実暴露系小説」というのは「情報小説」でもあって、こーいう小説は世の中の進歩に貢献するのだよ。
この小説は、日本では、1960年代に映画化されて、1967年(佐藤慶主演)にドラマ化された。
1978年にも、1990年にも、2003年にもドラマ化された。
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いよいよ2019年にもドラマ化されて、今放映中だ。明後日で終わる。
私は、1978年の田宮二郎(1935-1978)さんの財前五郎版は見た。大学院生の頃だ。
なにしろ、1978年に放映されて、最終回が放映されてた時は、すでに田宮二郎さんは猟銃自殺をなさっていた。
まだ43歳の若さだった。
だから、印象にすっごく残っている。
自殺理由は、躁鬱病とも、M資金詐欺にあったとも、ロンドンで受けた植毛手術が激痛でそのストレスで苦しんだとも、いろいろ言われてる。
おそらく、この方は、「俳優なんて男が一生やる仕事じゃない」とお考えになっていたのだろう。で、事業家として成功したかったのではないか。
だから、さまざまな葛藤がおありになったのだろうなあ。
男性はホルモンのテストステロンが多い方はそうなる。「男らしさ」という病気です。
2003年の唐沢寿明版は、ときどき視聴した。
韓国でもドラマ化された。
2019年版は、見逃し配信で、2019年版の第1回と2回を視聴した。
最初は、違和感が大いにあった。
登場人物たちの表情がやたら漫画チックに大げさだ。
日本人は、階級が上になるほど、インテリほど、自分の感情を表に出さない。
あからさまに目を剥いたり口元を歪めたりしない。
ポーカーフェイスというのが、日本では品のいいこととされる。
なのに、2019年版では、国立大学の医学部の医師たちが、やたらに感情をむき出しにしている。
ありえんありえん。
医師というのは、何が起きても冷静沈着で、ものに動じない風を装わないと、患者に不安を与える。
こんな軽薄な大学病院の先生なんかいるもんか。
でも、現代の視聴者は馬鹿だから、目に見えないものについて想像する力がない。
だから、登場人物の内面がすぐにわかるようにということで、国立大学病院の医師を演じる俳優は漫画みたいな演技をするようにしてるのかな?
かもしれん。
で、昔はどうだったかな?と思い、YouTubeを漁ってみた。
あった、あった!
1978年版『白い巨塔』全31回みんな視聴できた!
アップしてくださった方に感謝です。
時間がもったいないんで、1.5倍速や2倍速で視聴した。
見始めたら、これが超面白い!!
さすが、名優たちである。すごい迫力である。
ほんとに、役柄の人物にしか見えない。
田宮二郎さんはもとより、中村伸郎、加藤嘉、小沢栄太郎、佐分利信、曾我廼家明蝶、太地喜和子、南恵美子、北村和夫、金子信雄、岡田英次、山本學、児玉清、河原崎長一郎、松本典子、北林谷栄、小松方正、高橋長英、中村玉緒、西村晃、山田太一、谷幹一……
おおおおおお〜〜かつての俳優さんは実に優秀な風格のある人々だったんですねえ!
自分も還暦を過ぎたからこそわかる当時の俳優さんの演技力の質の高さよ!
ジャニーズ系タレントとは大違いだ!
昔の名優たちは、口跡もはっきりしているので、2倍速でもちゃんと聴き取れる。
accurateね〜〜
役者とか俳優という面で見れば、1978年版の方が圧倒的に優れている。
たとえば、里見医師の役。
1978年版里見医師(山本學:1937-)は、実に良かった!
私は、山本學さん扮する医師としての責任を果たそうと努力する里見医師に大いに共感した。
ほんとうに、こんなドクターがいそうだよね、どこかに。
リアルだった!
でも、2003年版里見医師(江口洋介)は、馬鹿で鈍感な偽善者に見えた。
2019年版里見医師(松山ケンイチ)は、かわいいけれども、『デスノート』のLが白衣着てるだけに見える。
演じる俳優によって、登場人物が共感を呼んだり、馬鹿に見えたり、『デスノート』に見える。
山本學と江口洋介じゃあ、比較する方がおかしいか。
山本學は俳優だけれども、松山ケンイチはゲームのキャラクターだもんな。
俳優の力って大きいんだなあ。
ところで、1978年当時の病院って原始的。
暗いし古いし汚い。
今の病院は大部屋といっても4人部屋である。6人部屋なんてことはない。
医療機器も原始的。なに、この不鮮明なモニター画像は?
看護師さんの制服が大昔のスカートだ。髪に白い帽子。
髪を全部覆うなら衛生的だけれども、小さいナース帽なんて、何の意味があるのか?
1978年版には時代劇感が満載だった!
男は威張ってる。
性差別丸出し。
セクハラ風土。
女性がすっごく異常に芝居がかって女性的だから歌舞伎の女形に見える。
太地喜和子さんや島田陽子さんが、ゴージャスな美人過ぎて、女装のドラッグクイーンに見える。
医師は威張ってる。
健康保険患者と自由診療患者(トクシンカンジャと言ってた)は、あからさまに扱いが違う。
患者からの金品はあたりまえのように受け取る。
一般の患者が挨拶しても無視の感じ。
階級差まるだし。
外来患者は予約制ではない。ずっと虚しく待っている。
女性の医師がいない。
研修医にも女性がいない。
みんなタバコ吸ってる。おいおい、病院の中だぞ〜〜
この時代にはCT検査もMRI検査もない。
レントゲン撮影検査と初期の断層撮影があるだけ。
腹腔鏡手術もダヴィンチも放射線凍結法もラジオ波焼却法も陽子線治療もない。
ともかく大きく切開して、医師が内臓の中を手探りして、腫瘍を発見してメスで切除するしかない。
切開した後は手縫いで閉じるから、外科医によっては、もう縫い目の雑なこと。
携帯電話ない! ポケベルでさえない。
パソコンもタブレットもない。
和服着て、女性の患者さんが外来受診に来る。
そんな格好じゃ脱ぐのも大変で、医師は聴診器も使いづらいのに!
1970年代くらいまでは、女性はけっこう自宅でも外出先でも和服を着てた。
母がそうだった。
男性は帰宅後に和服に着替えて、冬はその上に丹前を着てた。
父がそうだった。
1978年版の患者たちは、医者ってのはちょっと触診すれば、病名をすぐに当てることができると思い込んでる。
医師に過剰に期待して大騒ぎしている。
「半分くらいは誤診だし、どんだけ検査しても病名がわからんこともあるし、患者の個体差は大きくて誰にでも同じ効果が期待できる薬剤はないし、副作用のない薬剤もない」
という現代の常識からすれば、当時の患者はみな依存心の強い無知な愚民。
今の患者は、前もってネット検索して情報武装して受診する。
うわあ……患者もそうとうに変わった!
また、1978年版には、今なら差別発言としてネットで炎上するような台詞がガンガン出てくる。
「私ら産婦人科医は、女の体のドブさらいしてカネ作るんですわ」
「山陰大学[たぶん鳥取大学のこと]に飛ばされるらしいで」
「町医者ふぜいが国立大学医学部教授に何をえらそーに物言ってるんや」
「こいつは顔はヘチャやけど、モノはいいんでっせ。産婦人科のわてが言うんださかい、間違いおま!」
「僕は自分の罪を償いたいのです。高知の無医村に行きます」
「女の体のドブさらい」って……望まれぬ胎児の入っている子宮はドブか。
最近の若い人は頭が良くなって、性交もしないし、そんなリスクも犯したくないし、馬鹿と性交すると馬鹿が伝染するから性交相手を選ぶし、避妊するから妊娠しないし、よって中絶しないし、子どもも生まれなくて、昔ほどには産婦人科は儲からないらしい。
今は、小児科医と産婦人科医はなり手がないんだぞ。
人間の再生産に関わる分野は縮小しつつあるんだ。
少子化って言ってるけど、ほんとうは人間の数は多過ぎるんだ。
あとは人間の在庫整理である天変地異自然災害と戦争を待つだけである。
状況はドンドン変化している。
2019年版「白い巨塔」の病院風景は清潔で美しい。
病院内にはカフェもレストランもコンビニも美容院もあるし、職員食堂も充実してる。
脳外科教授は女性である。
1978年版では小松方正という悪役専門の俳優が演じていた役だ。
それを2019年版では、女性の医師で、しかも女離れして権謀術数を駆使する奴だ。
この設定も現代的だ。
厚生労働省や製薬会社や医療機器業界と医療界の協力関係(癒着?)は、より緊密になっている。
中国や東南アジアの富裕層が、医療ツアーに日本の病院に来る。本国の3倍の費用と10倍のサービスを求めて。
医師の研究室は広くてセンスがいい。
登場人物が身につけるスーツも仕立てもセンスもいい。
1978年版では、男性が着ているスーツもネクタイも、高収入の開業医でも、いかにも後進国タッチで趣味が悪かった。
2019年版では、医師や看護師の患者への姿勢は、はるかにサービス業らしくなっている。
1978年版「白い巨塔」に描かれた病院や医療従事者のあり方と、1990年代に親の入院で私が経験したそれらと、私が去年の夫の入院時に観察したそれらを比較すれば、今の方が絶対にいい!!
患者の立場からすれば、今の方がずっといい。
その現実が、ちゃんと2019年版に反映されている。
で、私は思った。
2019年版は、1978年版に比較すれば俳優陣の力量については完全に負ける。
しかし、豊かで便利な時代に生まれ育ってきた俳優さんたちに、心のヒダとか陰影とか知性とか期待するのは無理。
知性とか知恵ってのは、不如意な環境における創意工夫に、思考の粘り強い試行錯誤の成果なんだから、快適な環境に生まれ育てば、普通の人間なら馬鹿になるに決まってる。
そんなん、しかたない。
馬鹿で単純な現代の視聴者向けの俳優のオーバーアクションとか、感情がすぐに顔に出る品のなさとか漫画性は、現代ならば、しかたない。
観客だってその程度なんだし、製作陣もその程度なんだからさ。
これが現代だ。
2019年版『白い巨塔』には、それはそれなりに、現代という時代を見る面白さがある。
それが、いかに軽佻浮薄であろうと。
これはこれで面白いのだ。
いつの時代も人の世はおもろい。
それにしても、夫が去年の秋に入院して、病院とか医師や看護師さんの仕事を少しは垣間見たたという経験から、『白い巨塔』を視聴して思うことは……
外科医って、やっぱcrazyだよね。
他人の生身の肉体を切開して内臓から腫瘍を切除したり、血管を補強したり、事故で外に出ちゃった内臓を身体の中に押し込んだり、切断部分を縫合したり……
麻酔ってのもほんとすごい。
よく外科医になる気になるよね?
私は、カエルの解剖でさえ、できなかったぞ。
世界で、いったい誰が一番最初に実行したんだろ?
人体を切り開いて、内臓のおかしいところに手を突っ込むなり、余分な肉腫を切除すればいいんじゃね?と思ってほんとに実践した人。
crazyだわ……
あなた、できますか、そんなこと?
おかげさまで、夫の大腸ガンの腫瘍も切除されました。
その腫瘍が切除されないと、腸閉塞で死ぬのでした。
ありがとうございます。
crazyな人々のおかげで、社会は進歩します。
その外科医の仕事もAIが代替する未来がすぐそこに迫っているらしい。
ほんまでっか!?
それはさておき、『白い巨塔』の新旧ドラマ化を見た最終的結論。
20代の私にはわからなかったことも、60代になってる私には非常によくわかる。
66歳になって、しみじみわかることは……
「自分の良心に恥じることをすると、結局自分が自分を罰することになる」ってこと。
『白い巨塔』の根本的テーマだけは、昔も今も変わらない。
藤森様
こんばんは!
田宮二郎氏の“ 白い巨塔 ” 〜懐かしいですね〜!!
私もこの時代にはまだTVを観ておりました。
しかし…
・最近の若い人は頭が良くなって、性交もしないし、そんなリスクも犯したくないし、馬鹿と性交すると馬鹿が伝染するから性交相手を選ぶし、避妊するから妊娠しないし、よって中絶しないので、、、って…
これは本当なのですくわぁ〜〜!!??
私は何も考えずに、また思うままに“ 性行 ” しておりました。はい。
今回もまた新たな発見がありました。
ありがとうございました m(_ _)m
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生きる塾さま
コメントありがとうございます。最近の若い人って、そういう傾向にあるそうですよ。ほんと。未経験率が高いんです。まあ、ないならないですんじゃいますし。はい。
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藤森様
こんばんは!
貼られている動画、削除されておりますね!
私の方のやつもコピペしても直ぐに削除されてしまいます。やはりNHKですね〜!!
youtubeにまで、張り付かせているのでしょうかね。
金取っているくせに、セコい真似しますねまったく!
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私は唐沢さんのを見ました。比べてないので、わかりませんが、やっぱり自分が見たのに馴染みがあり、今回のはパスですね。イメージが出来上がっているのを変えられるのは苦手です。
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Tyakuraさま
コメントありがとうございます。そうですねえ。リメイクができて、前作が興味持たれるのはいいことですし。しかし、あのジャニーズさん、下手ですね。
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そんなに下手なんですね😅アカデミー賞にノミネート良くされてますが…私も彼の演技すべて同じに見えるんですよね😅
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Tyakuraさま
まあ、でもああいう演技が今の時代だとリアルなんでしょうねえ。演技も変化していくのでしょうね、時代とともに。
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