[416] 「毒親からサバイバル漫画」の効用

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本日は、2019年12月11日水曜日だ。

今日は、日本の漫画という表現手段の可能性のひとつとしての、最近隆盛を極めつつある「毒親からサバイバル漫画」について書く。

毒親ってのは、もう自分の歪みや鬱屈やコンプレックスを自覚できずに、無力非力な自分の子どもにぶつけて、子どもを支配下に置くことで、子どもの正常な認知機能を潰して、生涯にわたって子どもの人生を食い物にする親のことだ。

実際にこういう親はいる。

親の3分の1は、正真正銘の毒親なのではないか?

と、私は疑っている。

緩い緩いプチ毒親なら、いくらでもいる。

毒親なりかけ親も少なくない。

引きこもって親に暴力をふるうような子どもは、実は毒親への復讐を行使中かもしれない。

1982年に起きた東京大学名誉教授英文学研究の泰斗齋藤勇氏が孫息子に惨殺された事件など、ひょっとしたら齋藤氏は毒祖父だったかもしれない。

そもそもが、問題のない家庭もなければ家族もない。

理想的な家族とか家庭とか、幻想でしかない。

私なども、母が急死したときは、「救われた!」と思った。

私の母は、ちょっと発達障害系のグレーゾーンかなと思われる低スペック女性であった。

永遠の少女と言えば聞こえはいいが、成熟しそこなった人だった。

が、暴力を振るったり家事を故意にネグレクトするということはなかった。

ヒステリックに騒ぐことは、たびたびあったけれども。

そもそもがヒステリックに騒いで、家族をコントロールしようという人間は、国語能力がなくて小心であり内弁慶だ。

母の実家の人間にはよくあるタイプだった。

「まあ遺伝子ならば治らんわ……」と私は判断した。

だから煩いけれども私は放置した。相手にしなかった。

私は忙しかったので、母のお守りなどしていられなかった。

それでも、まれには、母より大声で怒鳴り返すこともあった。

私は切れることは滅多にないが、ほんとに切れると何するかわからないところもある。

私には、それぐらいの冷酷さと凶暴さがあるのが幸いだった。

もろに家族神話に洗脳されている妹のほうは、母に翻弄されていたが。

私と母が口論していると、妹は泣いて止めた。

他人の喧嘩など見物して面白がっていればいいのに。

総体的には、私は母をテキトーに無視した。

ただし、末期の癌の父に対して母が横暴に振る舞ったときは、私も母を突き飛ばした。

父が止めなかったら蹴飛ばしていたろう。

気が小さい人間は、自分を守るべき人間や自分が依存していた人間が弱ると、見捨てられたような不安感と恐怖で、その人間に対して怒りをぶつける。

そのような夫婦関係しか構築してこなかった私の父親も悪い。

そのような資質しかない人間を妻にした父も悪い。

しかし、普通の若い男に、女を見抜くような目があるはずはない。

私の母のような程度の少々毒親なら、いくらでもいる。

私は何を言いたいのか。

つまり、誰にとっても、親はありがたい存在でもあるが、煩わしい重荷でもあるということを言いたいのだ。

親に対して、そういうことを言ってはいけない?

なんで?

事実でしょーが。

産んでもらったから?

子どもは誰一人として親に産んでくれと頼んだことはない。

勝手に作って産んだならば、成人までは責任を持って育てるしかない。

それが嫌なら、産まなければいい。

ちゃんとよく考えて妊娠して産め。

暇つぶしと怠慢で、この世に産まれる羽目になった子どもからすれば、非常に迷惑な話だ。

ともかく、普通の程度の親との関わりでさえ、子どもにとっては重いんである。

ましてや、サイコパスなどの精神障害者やアル中や、性的虐待者や虚言癖などの人間が自分の親であったら、その悲惨さはとんでもない。

しかし、このようなことは知ったり読んだりしても不快で憂鬱なだけだ。

だから、私はこの種の問題を扱った本を読んだことはなかった。

以下のような本があることは知っていたけれども。

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ここに収録されているのは、毒親サバイバーたちの親への決別の手紙だ。

自分の親が卑劣な人間であったことを直視して、親の影響下にあった自分を分析し、別の生き方を模索できるようになった人々の手記だ。

毒親から逃げることができずに、毒親と心中しているような人々も多いけれども。

私の観察では、親と心中してるみたいな人は男性に多い。地方の男性。

親の価値観から一歩も出ることができないタイプの人だ。

頭が悪いと、まず毒親の餌食になるね。

息子は甘やかされがちだけど、これは去勢され無力化されているのと同じだから。

息子よりは待遇が悪いので、娘の方が親の毒に気がつくことが多い。

だから、娘の方が葛藤が深くなる。

特に母と娘の関係は、ややこしくなる。

ある種の母親は、娘が自分より幸せになることが許せない。

この種の母親は、娘が自分よりそこそこ不幸でいることを望む。

なおかつ、自分のそうした心理に気がついていない母親が多い。

この種の母親は、親の愛に飢えて育った。だから愛を自分より受けている者に嫉妬する。

だから、娘が自分より幸福になることは許せない。

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家族というのは、もっとも原初的人間関係だから、家庭で学んでしまった対人関係は、どうしても、家庭外の対人関係にも影響を与える。

職場の上司同僚とか友人との関係や夫婦関係がうまくいかない人は、まず自分の生育歴を振り返るしかない。

変な人と関わったときは、その人物の家庭環境や親の姿勢がその人の変ぶりの原因なんだろうなあと推測するしかない。

しかし、具体的にどう推測すればいい?

そこで、気軽にサッと読めて役に立つのが、最近、隆盛になっている「毒親サバイバル漫画」だ。

サッと読めるのがいいよね、漫画は。

たとえば、高嶋あがさ氏の『母は汚屋敷住人』と『母を片付けたい』。

物を捨てることができない整理整頓能力皆無家事まったくしない毒母さの呪縛から解放されていくプロセスを描いた漫画です。

こーいう母親を持った著者と著者の弟さんは、だからといってグレもしなかったのでありますが、弟さんは子供時代は給食が頼りの栄養失調児だった。

友だちの家に上がり込んでご飯を食べさせてもらったこと数知れず。

お母さん、腐った食品を食卓に出すので……

放置子のサンプル。

ほんとに何もしないお母さんっているのだ。サイコパスマザー!

ところが、このお母さんは非常勤の学校の先生なのだ……

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著者の高嶋あがさ氏は、毒母さんのトラウマが凄すぎて、もはや結婚する気にもなれなくて、今や「孤独死」についての漫画をネットで発表しておられる……

いくらなんでも、まだ早いだろ……

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げに、育った家庭におけるトラウマは大きいのだ。

「毒親サバイバル漫画」には次のような作品もある。

あらいぴろよ氏の『虐待父がようやく死んだ』だ。

すごいタイトルだ。

この虐待父は娘に性的虐待もしようとした。

娘が頭が良くて逃げ切ったので、事なきを得たのが良かった。

しかし、著者は父が死んだ後も、そのトラウマには苦しめられる。

父に似たような男性を見ると脚がすくむし動悸が激しくなる。

実は、この父も自分の親から虐待を受け育ち、生涯にわたって、心の傷を修復できず、その鬱屈から、外面はいいが、家族に暴虐を尽くしたのだ。

この父は、自分の親の内実を直視できず、自己分析する知性もない永遠の馬鹿ガキであった。

頭が悪過ぎる。

男性で自分の家族を相対化して眺めることができない人は結構多い。

男性は自分の感情の分析は苦手だ。

この父がガンで亡くなったとき、子どもたち3人は誰も泣かなかった。

やれやれだ。

著者は、はじめは母親に同情していたが、じょじょに気がつく

母親が離婚しなかったのは、子どもたちのためではなく、子どもより夫が大事だったからだと。

母親は、離婚せず、自分の3人の子どもを夫の暴力に晒して平気な、ほんとうは残酷な人だったと。

「毒親虐待親」事例には、母親がダメ事例もあれば、父親がダメ事例もある。両親ともクズもあれば、片方はマトモってのもある。

しかし、ほんとにマトモならばクズと結婚はしない。結婚しても離婚する。

離婚しなかったのは、似た者どうしだったってことだ。同じ穴の狢だったってことだ。

夫婦のうち片方だけクズってことはない。

問題は父親だと思っていた著者は、母親も実は共犯者だったと後日気がつくのだ。

辛いね。

でも気がついて良かった。もう両親に足蹴にされちゃいけない。

お墓にオシッコしたれ。

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他には、こういう「毒親サバイバル漫画」もある。

田房永子氏の『母がしんどい』だ。

これは母と娘の葛藤中心。

これも、母の問題の背後に父の問題がある。

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そして、この漫画。

菊池真理子氏の『毒親サバイバル』。

11人のサバイバーの聞き取り漫画だ。

いろんな毒親がいるものだ。

祖父母が毒って例もある。

子どもは親を選べないからね…辛いよね。

家族は、場合によっては幸福の源であり、場合によっては不幸の沼だったりする。

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現代日本の漫画のジャンルである「毒親の呪いから自分を解放するための悪戦苦闘」コミックは、非常に有益だと思う。

テーマの重さから、普通の活字の単行本だと読む気になれないけれども、漫画だと読む気になる。

毒親って、最近の現象なんだろうか。

いや、大昔から毒親は多かったのだろう。

子どもは沢山生まれ、沢山死んだ。

生まれてすぐに捨てられた赤ちゃんも多かった。

大昔には、子どもは産みっぱなしの死にっぱなしが普通であった。

戦前は、娘を女郎屋に売り飛ばすのは貧困層ではよくあることだった。

昔は、自分の親の人格を疑ってはいけないという洗脳が浸透し過ぎていて、子どもたちは親への疑問を心に封じて、親から人生を潰されてきたのだろう。

しかし、21世紀はばれる時代だ。

何千年と続いてきた家族神話が、やっと幻想でしかないと、とんでもない親もいると、バレてきたのはいいことだ。

神話は壊していい。

むき出しの真実から目を背けない。

「毒親からサバイバル漫画」は、直視し難いことを見やすくしてくれる。

漫画だからできることだ。

酷い親からは逃げていいのだよ。

酷い親を捨てていいのだよ。

家族とかこだわることないよ。

親は自分で自分を幸福にすべきであり、子どもを利用使役搾取してはいけない

産んだのは自分なのだから、子どもを育てる苦労を子どもに言うのは間違っている。

少子化ってさあ、ひょっとして若い人たちの育った家庭が機能不全で、そもそも結婚するのが怖いとか、子どもを産んで家族を作るとかについて希望が持てないとかも、そういう理由もあるかもしれない。

私も教師やってて、21世紀に入ったあたりから、家庭がおかしい学生ってすごく増えてきたなあ、と気がついたもの。

1990年代後半には、「アダルトチルドレン」の問題が日本でも初めて浮上した。

2000年には「児童虐待の防止等に関する法律」が制定された。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv22/01.html

2007年に、この法律は改正されている。

私たちは、認めるしかないんだ。

親になる人々の最低3割は、毒親になるしか能力がないのだということを。

特に1990年あたりのバブル崩壊から景気後退は長引き、雇用が収縮し、給与は上がっていない。

2000年あたりからの派遣法改正のために、リストラされたら、任期雇用の職しかない親も多くなっている。

心理的にも経済的にも親になる準備なく親になってしまう。

それでも、育てながら親になっていくことも多いだろう。

ほとんどはTOJtraining on the job なのだろう。

でも、とうとう最後まで親のフリはできても親になれない親も少なくないのだろう。

「親はなくとも子は育つ」

これを真実で事実にするには、どうしたらいいのだろう。

児童相談所は予算不足で知識不足で機能不全らしい。

ただでさえ、公務員の4割は任期雇用の官制ワーキングプアだそうではないか。

慢性的人手不足だそうではないか。

児童養護施設のスタッフから虐待を受けることも少なくないそうではないか。

もうこうなったら、次善の策で、子どもにサバイバル法を教えないといけない。

かわいそうに。

21世紀の子どもは、のんびり子こども時代も過ごせないのか。

しかたない。

親が毒でも狡猾でも卑怯でもサイコでも、親から身を守る方法を子どもが学ぶ必要がある。

そのためにも、「毒親からサバイバル漫画」はいい教材になる。

小学校の図書館にいっぱい備えて欲しい。

課題図書にして欲しい。

学校の先生は、いじめと呼ばれる暴行にも対処できないし、毒親からの虐待にも対処できない人が多いだろう。

TVアニメにするとか、「毒親からサバイバル」ゲームを発売するとか。

ポケモンより「毒親からサバイバル漫画」よ。

くだらん童話や児童文学なんか置かなくていいから。

21世紀に、「シンデレラ」や「秘密の花園」読んでもしょーもない。

カボチャの馬車はやって来ないから。

馬車なんて、いまどき遊園地にもない。

庭園の中に壁で閉じ込められた一角は見つけられないから。

そもそも、大方の日本人には庭園なんか関係ない。

「毒親からサバイバル漫画」の効用は三つ。

すでに機能しようがない家庭は多い現実を、あらためて人々が認識するために。

たまたま毒親の元に生まれた子どもたちに、サバイバルはできるし、ちゃんと幸福になれるよと教えるために。

何よりも自分自身が毒親にならないために。

5件のコメント

    1. 創る塾さま

      コメントありがとうございます。毒親は増えているわけじゃないです。毒親ってのは、昔からいて、今もいるんですが、子どもたちが成長して声をあげたので、問題が可視化されるようになったんですね。

      急に日本人が劣化して親をやれなくなったわけではないんです。また、家庭内のことは見えませんからね……

      でも、親の3割ぐらいは困った親だと思いますよ……

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      1. 藤森様

        私も人の親なので、ドキッとしてしまいます。
        3割の困った親の中に入ってしまわないようにしなければですね〜

        いつも勉強になります。
        ありがとうございます。m(__)m

        いいね: 1人

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