本日は、2023年1月15日日曜日です。
金曜日までの数日間は寝込んでいました。
熱が37.9度まで出ちゃいまして、食欲もなく、ひたすら眠っていました。
熱は、翌朝には引いてましたが、ひたすらだるいわ〜で、またまた眠ってばかりでした。
が、昨日土曜日の午前中に第5作の初校ゲラが届きましたので、またプチ忙しくなったので、寝込んでいられなくなりました。
ボケッとしてるとろくでもないことしか脳に浮かばないので、仕事あるほうが、しんどくてもいいや。
それはさておき、今日は、2023年に読んだ本第1号について書きます。
去年暮れから読みたくて、原稿があったので、読むの我慢して、1月2日に原稿を送って、それからAmazonに注文した小説でした。
なのに、くたびれきっていたので、少しずつしか読めずやっと昨日に読み終えたのでした。
何日かかっとるんじゃ、小説一冊読むのに。長編でもないのに。
ジャーン!これです!
見よ、この表紙の筋張った手と指と赤い爪の禍々しさと魅惑を!
この表紙はよく表現しています。
この小説が、老いた女性の心の奥にある情熱を描いたものであることを。

岩波書店が、こういう帯の惹句(じゃっく)を作るんかね?
「ノワールおばあちゃん?!」ってさあ。手作り風クッキーの宣伝か!
まだ65歳の女性に、おばあちゃんって言うな!
でも、こういう小説を出版してくださり、ありがとうございます。
とても読み応えある小説でした。
ノワールつーのは、フランス語で黒。暗黒。
つまり、犯罪ですね。
暗黒犯罪小説なんざます。作家は、ク・ビョンモさん。女性作家。
主人公は65歳の女性の殺し屋です。
Amazonにレヴュー書いたので、転載しますね。
(転載はじめ)
読み応えある小説です。故意に分かりにくい長い文章のために、飛ばし読みできず,丹念に読まねばなりません。結果として、丁寧に読まねばならず、主人公の子供のころからの人生と韓国の現代史があわさって、濃厚な世界に読者は浸ることができます。
主人公は孤児の身を殺し屋家業の男に拾われて、素質を見込まれて、暗殺屋の技術を身につけ、それを生業にしてきた女性。今や、65歳になり、若い頃のような瞬発力や機敏さが持てなくなり、殺し屋家業のオーダーもこなせなくなってはいるのですが、そんな彼女をある若い男性の同業者が敵視するようになります。
ネタバレになりますので,これ以上は書きませんが、彼女と若い殺し屋の死闘の描写はリアリティがあります。
それよりも、私にとっては、描かれている現代韓国の空気や日常生活の描写や、人間関係のあり方などが、非常に心惹かれました。
最近の日本の小説の、漫画にも負けるライトノベルじみた薄っぺらさに物足りない空虚さを感じていた私にとって、生きることの重みと寂寥を伝える文学体験でした。
こーいう骨太でパワーのある小説が読みたかった!嬉しい。
翻訳も装丁もいいです。この作家の小説がもっともっと翻訳されますように。
(転載おわり)
ここだけの話、ぶっちゃけて言えば、このヒロイン爪角を敵視する若い殺し屋のリュウは、かつて彼女が殺害した男の息子だったのです。
この息子は、父を殺して,ベランダからヒラリと逃げて行った中年女の白い顔に、死神のように魅せられたんですねえ。
これ、恋愛感情と紙一重。ルサンチマンでもあり、憧れでもあり、恋でもあり、憎しみでもあり、トラウマでもあり。
このリュウが、どうしてヒロイン爪角の暗殺稼業の時に受けた怪我の治療をした30代の医師の幼い娘を誘拐したのか。そんな必要はないのに。
彼は、ヒロインが、この自分と同年代の30代の医師に向けるまなざしに激しく嫉妬したからだ。許せなかったからだ。
ヒロインは幼い少女を救出すべく、死地に赴きます…..
この小説は、プロの殺し屋どうしの激突に見えて、からまった恋心の話なんざます。
しかし、そーいうことを細かく、この小説は書きません。
ハードボイルドな犯罪小説は、そーいうことはダラダラ書かない。
リュウが、殺し屋業界に入った経緯も書かれていません。
そこは、読者が想像力で補ってください。
さて、私は、ヒロインの孤独な矜持に共感し、その傷だらけの人生を黙って引き受ける姿勢に励まされ、私も生きて行こう〜〜と、あらためて思うのでありました。
この小説は、いずれ映像化されると思うのですが、もし日本で映画化とかドラマ化されるとしたら、ヒロインは誰が演じることができるか?
アクションができる初老の女優。
うーん。誰も思い浮かばない。
25年後の綾瀬はるかちゃんかしら。
長澤まさみって、アクションできる?
まあ、演技力のない日本人俳優では無理だから、アニメにする?
ノワールアニメ。
読み終えて、私はさっそく、この作家の翻訳されている小説を注文しました。
さてさて、届いて読むのが楽しみです。
ハッキリ言うけどさあ,本屋大賞とか受賞する小説って、いいのもあるけど、アホみたいなのも多いよ。
まあ、芥川賞や直木賞は,そこまで落ちていないけど。
だから、韓国の小説の,特に女性作家の筆力に感心しつつ、私は悔しいなあ〜と思うのよ。
みなさま、なんかこれぞと思った小説があったら、教えてください。
これからの10年間の不快さに耐えるには、もうほんと読書しかないわ。
初めまして!
舌はがしで藤森様を知り、メール配信をいただく様になりました。今回の書評を見て早速読んでみたいと思いました、有難うございます。ちなみに日本では『ザ・ファブル』という、岡田准一主演で映画化もされている漫画があるのですが、子供の頃から殺し屋に育てられた最高傑作の天才殺し屋がその能力を人を殺さず人のために使うようになる物語があります。漫画ながら表情と心の機微が絶妙でなかなか素晴らしいものです。(ご存じだったら失礼)
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ジョンさま
コメントありがとうございます。
「ザ ファブル」は原作の漫画読んだことあります。映画も観ました。岡田准一さんはいいけど、ミスキャストかなあと思います。岡田くんでは、あの、いつも困ったような主人公の表情の奥にあるものが出せないですし。
漫画の質は高いですよね。「ダーウィンクラブ」とか「ガッド オブ ブラックフィールド」とか好きです。
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ジョンさま
コメントありがとうございます。「ザ・ファブル」は、原作の漫画からでなく、岡田くんの映画から入ったので失敗しました。漫画の主人公の表情の方が含蓄もあり、影もあり、いいのですが。映画化は漫画のリアルな空気をぶち壊してます。アニメにしてくれる方がいいなあ。
私は,今は「ダーウィンクラブ」と「ガッド オブ ブラックフイールド」にハマっていますが、あれもアニメになるのかなあ。
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