本日は2023年の11月5日日曜日です。
今日のBlogのタイトルは、昔に読んだ大場正明氏の『サバービアの憂鬱―アメリカン・ファミリーの光と影』(1993)からパクりました。

この本は非常に優れたアメリカ文化論です。
最近,復刻されました。
サバービアというのは、suburbia。
郊外地suburbに住んでる人のこと。
アメリカでは都市部の中心地ってのは、中産階級が住むところじゃないので。
マンハッタンとかならいざ知らず。
ダウンタウンは職場があるんで通うところか、もしくは週日に寝泊まりするアパートメントがあるところで、ほんとうの住居は郊外にある。
富裕層だと、英国人を真似て、それを「カントリーハウス」って呼ぶ。
ダウンタウンに住んでるのは,はっきり言って貧乏人なの。
ダウンタウンの住宅地は、スラムに近いの。
つまり、アメリカ人にとって、郊外に大きな一戸建てを持てることこそが、そこそこの成功者。
そうなってきたのは、戦後1950年代から。
戦前や1950年代のアメリカの都市部の住居はアパートメントが多くて、広さは家族向きでせいぜい80平方mぐらい。
これ今の日本のマンションの広さと変わらんよね。
でも、戦後に,帰還兵の結婚も多くなり、ベビーブームとなり、郊外住宅の開発がすごくなって、どんどん居住空間も平均120平方メートルぐらいになった。もちろん、地下室やガレージは別で。

ともかく郊外族になれれば、サバービアになれれば、良かったんよ。
が……すでに1970年代くらいから問題は出てきてた。
隣人とのつきあいがうざいの。
バーベキューパーティに参加しないと困るんよね。
隣人コミュニティから浮くと困る。
庭はいつも管理整頓美しく。クリスマスの飾り付けは浮かない程度に美しく。
アメリカにはアメリカの同調圧力ってあるんよ。
専業主婦がデフォルトの郊外族の女性たちも、キャリア志向になってくると、郊外族の人間関係はストレスになる。
子どもの学校への送り迎え。公立に行かせるか中高一貫の私立にするか。
ローンを返済したら、もっといい郊外住宅に移りたい?
そのうち、アメリカの経済状況も悪くなってきた。
不動産価格の下落。
じわじわと移民が郊外住宅地に入ってくると、不動産価格がさらに落ちる。
サバービアはあくまでもホワイトな世界でなきゃ。
黒いのや黄色いのやヒスパニックやゲイの夫婦やレズビアンの家族なんて。
アメリカの豊かさのシンボルであった郊外の住宅地と郊外族は、今や大変化を求められている。
犯罪が増えるのが嫌で,移民が嫌で、有色人種が嫌で、富裕層はガードマン付きのGated Cityに住む。
そこまではできない中産階級の郊外族にとっては、成功のシンボルの郊外の庭付き大きな住居は、今や重荷になりつつある。
重荷になっても、どうしようもないよ。
それにね、そこそこ成功者のサバービアになってもさ、実感としてはそう楽しくはなかったのね。
生活そのものは日常の積み重ね。日常生活は繰り返し。
退屈だし、ワクワクしない。
若い頃は、なんかあの山を登ればキラキラした何かが待っているような気がしてた。
でも、いくつ山を越えても砂漠なのね。
テレビドラマや映画みたいなロマンチックなことは起きない。
そんなこと本気でしたら離婚騒ぎでカネがかかる。
初婚を貫く方が経済的には得です。
不倫とか浮気といっても、そんなもん、引っ越しとか考えたら,面倒くさいし、飽きるって。
恋愛なんて,中年過ぎたら、カネ持ってる人の娯楽でしかない。
消費すれば、その当座は充実も得られる。
でも、中産階級の人間のできる消費なんて,大したもんじゃない。
どんどん日は過ぎて,自分も夫(妻)も老けて,子どもたちは思うようにはならない。
なああああんにも面白くないのね。
人生って、こんなもんなんかしらん。
平和と物質的豊かさはそこそこ確保されてるということの、有り難みを感じる感性がなければ、郊外族の人生って、薄っぺらい。
日常を超えてものを考えるような知性や教養なんて、ほとんどの人間にはない。
大学は出ただけ。有利な職業に就くために。
女性なら、そこそこいい大学を出ていなければ、いい暮らしをさせてくれる男と結婚できないわ、というノリで進学しただけ。
そのうち老人となり、病院に行くことも増え、高齢者施設に入居する費用が気になる。
サバービアの人生も楽じゃない。
なんで、私が『サバービアの憂鬱』について書いてるかと言えば、先日11月1日に、世界のTOYOTAのお膝元の豊田市に行ったから。
ひょっとして初めて行ったのかも。
あそここそ、サバーブだね。
あそこの気分こそ、サバービアの憂鬱だね。
なんで豊田市に行ったかと言えば、豊田市美術館でフランク・ロイド・ライト特別展をしていたから。
特別展自体は、まあ面白かった。
でも、この本さえ入手できれば、特別展そのものに行かなくてもいいよ。
よく構成されている情報の多いガイドブック。でも、これamazonでも売ってますよ。税込み3000円ちょっと。

実際にライトの設計の建物を見る方がライトのすごさはわかる。
あたりまえか。
愛知県犬山市の明治村か,芦屋のヨドコウ迎賓館に行けばいいです。
ただもう空間全部がライトなので、細部までライトの趣味がいっぱいなので、ちょっと息苦しいけど。
どうでもいい空間も用意すれば、風通しのいい自由な感じもするのに。
でも、ライトって、感覚は新しくて、いつも更新中の人だった。
普通の住宅やホテルや近代的オフィスや美術館や学校を設計しただけでなく、コストのかからないプレハブ住宅とか、コンクリートブロックの使用とか始めた人。
アイデアいっぱい。
英国国内の貧乏植民地のウエールズからアメリカに来た移民2世で、大学を出ずに建築家として成功した。
アイン・ランドの小説『水源』The Fountainhead(1943)の主人公のハワード・ロークのモデルと言われてる。

ほんとうは、全く似てないけどね。
ライトの女性関係はすごい。
6人の子どもを儲けた最初の妻と子どもを捨てて、次の女性と駆け落ちして外国に行っちゃう。
帰国後に、どういうわけか女性の使用人から,次の奥さん(内縁関係。最初の奥さんは離婚拒否)との家に放火され、奥さんと子どもたちと弟子たちで7人を斧で殺害された。
犯人は理由を言わずに獄中で死んだけど、なんかちょっと疑うな。
女性がこんな殺し方するのは、よほどの恨みだ。
ライトは、わりと人の恨みを買っている。
人の気持ちはわからん人で、しかもケチでサイコパスだったんだろう。
天才って、だいたいが発達障害で空気は読めない。
スティーヴィ・ワンダーみたいに、離婚するたび、女性と別れるたびに、自分の楽曲一曲の版権を渡していれば、恨みを買うこともなかったのに。
カネで恨みもチャラになる。
そういう大人の計算ができない人だったんよね、ライトは。
「人間知」が足りないっていうのかな。
天才ゆえの欠如。
こんな悲惨なことがあっても、一時は落ち込んだが、立ち直ったライトはすごい。
でも、普通、立ち直れますかねえ?
ライトがサイコパスであったかどうかはさておき、ランドは、建築家としての多彩さについては、ライトの業績をモデルにロークを造形したことは確か。
ロークも住宅から、市営住宅とか、地方のデパートとか、賃貸料が安い夏のレンタル別荘とか設計したからね。
1923年の関東大震災で倒壊しなかった帝国ホテルはライトの設計だけど、このことはランドは注目しなかったみたい。
ロークは一度もアメリカの外に出ていない。
話は戻る。
豊田市美術館のライト展は、ライト財団が企画して特別展自体をパッケージにして売ってるものだから、豊田市美術館はその企画を全部買えるぐらいに予算が潤沢だってこと。
そりゃ世界のTOYOTAのお膝元だもん。税収も多く、財政力が大きい。
ひとりあたりの税収額は、愛知県は豊田市と、豊田市に隣接するみよし市が高い。
名古屋市じゃない。名古屋はビンボー。


みよし市は、世界のTOYOTAの下請け企業が多いんよ。
豊田市とみよし市はTOYOTAの城下町だ。
街ってのは、自動車で通り過ぎるだけでも、財政的に豊かかどうか。わかる。
住民の暮らしに余裕があるかどうか、わかる。
豊田市に入ると、すぐわかる。
ここにはカネがあるって!
カネ持ってんだよ!
住宅にカネがかかっていて,敷地も広い。
走ってる自動車はみなTOYOTA。Nissanなんてありません。
豊田市美術館は、緑が豊かな美しく広い高台に建ってる。
https://www.museum.toyota.aichi.jp/
この高台はかつては七州城のあったところ。
尾張と三河の中間地帯。
この高台の城の櫓(ヤグラ)から七つの地域が見渡せた。武田領まで見えたらしい。だから七州城。
今は、レプリカの櫓があるのみ。
豊田市美術館は,その広い広い城の敷地跡に建てられている。
それも、すごいデザイン。アメリカの美術館なみのデザイン。
John Wickのアクションシーンが撮影されてもいいぐらいのオシャレな空間だ。










レストランも水準が高かった。
スタッフの教育が行き届いていた。
スタッフの時給が高いんじゃないかしらん。
スタッフは、TOYOTAか関連の企業の社員の奥様なんじゃないかしらん。
奥様方のアルバイトなんじゃないかしらん。
品のいい、そこそこ綺麗な女性たちばかりだったもん。
私は名古屋市内のキリスト教系女子短大の教師をやってたので、TOYOTAが,女性社員に関しては、あるタイプの美人しか採用しない企業だってことは知ってる。
TOYOTA顔ってあるのよ。
つまり、世界のTOYOTAの正社員の妻の顔ってあるの。
と勝手に決めつける私。
さてさて、このライト展の次の会場はパナソニック汐留美術館。
ここも予算がありそう。
次の会場は青森県立美術館。
ここは三沢基地があるから予算あると思う。六ヶ所村再処理工場もあるしね。軍と核に関わると地域経済は潤う。
三沢基地は空軍なんで、海兵隊の沖縄と違って、軍人の給与が高い。ハイテックの戦闘機の操作ができるのは理系工学系人材だもん。自衛隊は米軍の三沢基地で訓練受けてるらしい。沖縄基地より、メインは三沢基地だよ。
[86] 青森を隠すために沖縄は報道される?
何の話か。
サバービアの憂鬱の話だった。
豊田市において、日本風サバービアの憂鬱を垣間見た私。
これ以上は書きません。
住みたいか?と言われれば、うーん……ちょっと窮屈。
私は、もっと雑然とした街がいい。
世界のTOYOTAのお膝元の街は,カネのかかった豊かさを見せびらかしつつも、なああんか、息苦しかった。
自由闊達な空気は希薄だった。
アメリカの1990年代のサバービアの憂鬱は、21世紀も20年経過した日本の郊外にも、うっすらと漂うものであった。
行ってみないと、わからんもんよ。

こんばんは、藤森先生。
今回のお話でPet Shop Boysの「Suburbia」を思い出しました。
彼らは英国のデュオなので英国のサバービアもこんなもんなのかと思いきや、LAを舞台にした「Suburbia」という米国映画をヒントを得て作られたのだそうです。
サバービアついでにタイタニックコンビ主演の「Revolutionary Road」も思い出しました。
サバービアは憂鬱です。
いいねいいね: 2人
Yukari_HKさま
コメントありがとうございます。
Pet Boys Shopも、Suburbiaという映画も、Revolutionary Roadも知りません。
ちょっと探してみます。
サバービアってのは、世間の王道であるスノッブの生き方ですが、まあ、そういう生き方を選んだのならば、退屈と空虚と虚栄からは解放されないのでしょうね。
いいねいいね
わぁ待ってました😄
とても興味深いお話しです🤔
女性との別れ方は笑える。超有名ミュージシャンには出来た弁護士がついているんでしょうかね。「またか…」って😆
いいねいいね: 1人
永島浩子さま
コメントありがとうございます。まあ、スティーヴ・ワンダーの別れ方は、弁護士さんの意見というより、このアーティストは、あんまり物欲ないのでしょうね。盲目だから、相手の女性に求めるものは純粋にケアと愛情だし。
今まで手間のかかる僕に親切にしてくれて,ありがとね,の気持ちの表現としての一曲版権提供だったと思います。
私ならば、I Just Called to Say I Love Youの版権もらったら、嬉しいなあ!
いいねいいね