#685 11/16/2024 『十一人の賊軍』の映画版に刺激され小説版と原案版も読んだけど、戊辰戦争で会津藩がプロイセンに傭兵派遣を依頼した背景がやっとわかった!

kayokofujimori のアバター投稿者:

本日は2024年11月16日土曜日です。

先日、映画『十一人の賊軍』を観ました。シネコンまで行きました。

とても面白かったです。

155分という長い上映時間を、飽きることなく集中できました。

時代劇のチャンバラアクション以上のパワフルなアクションが満載でした。

元気がない人は、こういう映画を見てファイトを掻き立てるといいでしょう。

私は元気が出ない時に観る映画は、アクションもの一択です。

好きな出演俳優は山田孝之くんだけだったのですが、それでも愉しめました。

かつての幕末ものって、佐幕派が頑迷で、勤王派が開明的という図式でしたが、当然、今どきの映画ですから、そんな明治以降の薩長中心史観は、蹴飛ばされていました。

しっかりと、官軍の野蛮さが描かれるようになりました。

錦の御旗なんて、勝手に捏造されたものであって、天皇は許可も何にもしていなかった。

と同時に、奥羽越列藩同盟軍の視野の狭さと時代を読む目の浅さも、しっかり描かれていました。

まあ、普通の武士なら、藩が消えるなんて思いもつかないよねえ。

今の時代と同じくらいの大きな時代の変化の踊り場にいても、ほとんどの人間にとっては、自分が立つ場所の意味はわからない。

祖父母が生きていた価値観で自分も生きて行くことに疑いはなかったろうなあ。

ということで、サムライという階級のしょうもなさも描かれていました。

より特権的な存在を守るために、自分たちの立場を守るために、何でもするという為政者の冷酷さも、よく描かれていました。

藩のために尽くしても、その藩が消える時代がすぐそこに来ていたのに。

ただ、私にとっては俳優のムダ使いだなあ思えました。

この役はこの俳優でなければ、というのがなかった。

155分では、11人の賊軍のひとりひとりのキャラを描くのには短かったのかもしれません。

東映得意の集団抗争劇のひとつであって、特に誰かを中心的に描くわけではないにしても、もうちょっと登場人物の描き方が丁寧であってもいいような気もしました。

でも、これは、意図的なものだったのかもしれません。

わからん。

でも、やっぱ俳優の無駄使いだわ。

『シン・ゴジラ』で、「まずは君が落ち着け!」と主人公にペットボトルの水を渡す俳優さんなんか、印象に残る人なのに、サッサと爆殺しちゃってさ。

ならば、あの役はあの俳優さんじゃなくて良かったでしょう。

えーと、松尾諭さん?あの人、なんかいいよね。

ともかく、映画を観たものの消化不良を感じた私は、ぶっちゃけて言えば不満を感じた私は、この映画の原案や小説版を読んでみました。

この映画の原案は、1970年代初期に書かれていました。

梗概、つまりプロットが笠原和夫(1927ー2002)によって書かれていました。

この笠原氏は仁義なき戦いシリーズなども書いた有名な脚本家です。

なにゆえか、AmazonのKindleで読めます。紙媒体にはなっていないみたい。

https://amzn.to/3CuiAfP

かつての東映では、脚本ができると、全部を重役たちの前で読み上げたんだそうです。

この原案から笠原氏が書いた脚本について、全員が死んでしまうという結末に重役の反対が出ました

映画はスカッとしなくっちゃ!という理由だったのでしょう。

それで、頭に来た笠原氏は、自分が書いた脚本をビリビリに破りました。

だから、笠原氏の書いた脚本は残っていません。

原案だけが残っているのです。

それが電子ブックになっていたのです。

で、これをたまたま読んだのが、映画『十一人の賊軍』の監督の白石和彌氏です。2018年のことでした。

なんて面白い!

それから、これを映画化しようと白石氏は東映に働きかけます。

今どきの日本映画で大型時代劇制作は難しい。予算も10億円ぐらいしか出ない。

アメリカなら制作費15億円以下なら、独立プロ制作映画の小品ですよ。

そういうこともあって、誰もが知るビッグネームの俳優は使えない。

11人の賊軍を構成する11人のうち、有名なのは山田孝之くんぐらいなものですね。

あと阿部サダオさんとか玉木宏さんとかも出てましたが、なんで官軍の山縣狂介(山縣有朋)の役が玉木さんなのか、よくわからん。

それはいいとして、2024年夏に、歴史作家の冲方丁(うぶかた・とう)氏が同名の小説を出版した。

https://amzn.to/3Z9AJIw

どういう経緯で冲方氏が、笠原氏の原案を小説化したのか、よくわかりません。

さすが、冲方氏の小説ですから、非常によくできているし、面白いです。

しかし!

この小説は、1970年代の笠原氏の原案を土台にしてはいますが、全く別個の作品になっています。

結末も違います。

私としては、この冲方氏の小説をそのまんま忠実に映画化するべきだったんじゃないのかなと思う。

でもまあ、冲方氏の世界観もあれば、映画監督の白石和彌氏の世界観もある。

いろんな『十一人の賊軍』があっていいのだろう。

と、物分かりのいいことは思わんよ、私は!

小説版の方が絶対にいい!!

これなら、登場人物ひとりひとりの人生が浮かび上がるぞ。

まず、この映画世界の歴史的背景を書きます。ネタバレはしないですよ〜〜

時は1967年の大政奉還の直後。

東北諸藩は、薩長土肥の官軍ではなく徳川に殉じるのが筋として、奥羽越列藩同盟を結びました。

官軍は、その同盟を蹴散らそうと東北にやって来るのです。

戊辰戦争です。1868年から69年にかけての日本最大の内乱でした。

別に話し合いで何とかならんかったのか?と思うのですが。

その同盟軍の中に新発田(しばた)藩という小藩がありました。

今の新潟県新発田市です。

この新発田藩は、新潟湊(にいがたみなと)っていう沿岸地区の近くにありました。

信濃川とか阿賀野川なども大きな河川が合流して日本海に注ぐ場所です。

この地区が、中世の頃から非常に重要な物流の拠点でありました。

松前船とか北前船の日本海の物流を担った船が係留した自然の港でした。

彼らには、家老直属の3人の藩士もつける。

幕末の1858年安政5年に、日本は開国させられたわけですが、その時の相手はアメリカだけではありませんでした。

オランダや帝政ロシアやイギリスやフランスとも通商条約を締結しました。

それで、新潟湊にも、日本の内乱で稼げると計算したプロイセン(ドイツ北部からポーランド西部にかけてのドイツ帝国の中心地)の武器商人がやって来たんですね〜🎵

よく来たよねえ〜🎵 こんな極東の離れ小島に。物好きだわ。

武器商人は、オランダ語の通訳を通して、欧州で売れ残った旧式の兵器を東北各藩に売りつけたわけですね。

ついでに、病院を建てて、オランダ人やイギリス人の医者が、この新潟湊に来る外国人の治療をしていた。

船医だったんでしょうか。母国でドジ踏んだ医師だったのでしょうか。

カネさえ払うならいいってことで、日本人の治療もしていました。

つまり、官軍にとっては、自分たちと敵対する東北諸藩に武器物資を渡さないためにも、また負傷した兵士の治療のためにも、この新潟湊を制覇しなきゃいけない。

つまり、この新潟湊の近くの新発田藩を制覇しないといけない。

それは、奥羽越列藩同盟にとっても、同じこと。

新潟湊を官軍に取られるわけにはいかない。

そのためには、新潟湊の近くにある新発田藩をガッチリと抑えとかないと危ない。

というわけで、新発田藩は、官軍と奥羽越列藩同盟の間で難儀する。

ところが、この藩の藩主は祖父さんの頃から尊王思想。孫の殿様も尊王思想。官軍に味方する気満々。

しかし、そんな意志を露わにしたら、奥羽越列藩同盟に攻撃される。特に近所の長岡藩から。

領内が戦場になったら領民が被る被害も甚大になる。

ここは面従腹背で行くしかない。

で、新発田藩の家老のひとり溝口内匠(たくみ)は考える。

新発田藩城内に威嚇するために駐留する長岡藩軍が立ち去るまで、官軍が新発田藩に入るのを阻止しなきゃいけない。

新発田藩の中で、長岡藩と官軍の激突は困る。迷惑。

ということで、官軍が新発田藩に入る道の山にある砦を守るように、佐幕派の藩士ひとりと死刑を待つばかりの入牢者たちに命じる。計11人。

長岡藩軍が新発田城から立ち去るまでの時間稼ぎをしてくれと彼らに頼む。

そうしたら、入牢者10人は免罪となり自由の身になり、褒賞も手にすると。

それで家老直属の藩士を3名、彼らにつけた。

ほんとは、事を成したら、この3人の藩士に入牢者と佐幕派藩士を処分させるために。

この3人のうちのひとりは家老の娘の許嫁だ。

という背景があるんですが、新潟湊がいかに重要な物流拠点であったかについての説明は、映画にはない。

だから、入牢者の中に、進んだ医学を学ぼうとロシアに密航を企てて逮捕された若い医者が混じっている理由がわからない。

なんで?って感じだ。

なんで東北の小藩の若い医者がロシアに行こうなんて突拍子もないこと考えるの?だ。

考えるのは自由だけど、どうやってロシアの船に乗るの?だ。

でも、これ可能性はあることだったんだ。新潟湊にはロシアの船も来てたから。

ロシアに行って、オランダに行くつもりだったと、小説版では書いてある。

ということは、この若い医師は長崎で蘭学を学んだことがあったのかも。

小説では、そういうことも示唆してる。

でも、映画ではない。

だから、いろいろ、わけがわからんの。

だから、映画は、今どきの時代劇としては非常に面白いけれども、21世紀の私を鼓舞できる傑作になり損ねていました。

できれば、ロシアに行こうとした若い医師の言葉を通して、世界の中の日本について考えさせる展開もあったと思う。

こんな狭い島で、佐幕とか勤王とかやりあっている愚を、登場人物たちが意識する展開もあってよかったと思う。

その意味でも俳優のムダ使いだったな。

特に山田孝之くんのムダ使いでした。ほんとにムダ使いでしたよ。

俳優は勘はいいんだから、監督や脚本家がちゃんと自分のヴィジョンやイメージを伝えなきゃ。そのヴィジョンが明確だったのかな?もしくは整理しきれていなかったのかな?

沖方丁氏の小説は読むべし!ですよん。

ところで!

やっとわかったよ。

なぜ会津藩が、戊辰戦争に備えてプロイセンに傭兵を送ってくれと依頼できたのか。

そもそも、なんで会津藩は、プロイセンの傭兵を思いついたのか?

そりゃ、プロイセンの傭兵の強さは有名であったけれども。

実際のところ、アメリカ独立戦争の時にも、プロイセンの傭兵は北米大陸に派遣されている。

英国軍が雇ったの。でも、アメリカ独立軍も雇ったの。カネで転ぶのが傭兵さん。

ともかく、そんなことを会津藩は、なんで知ってたか?

知ってたに決まってた。

会津藩の東部にあった新潟湊のプロイセンの武器商人から情報を仕入れていたんだなあ。

会津藩士も、プロイセンの傭兵の強さについては耳にしたことがあったんだ!

ただし、プロイセンから傭兵送りますという返答が来た時は、すでに戊辰戦争は終わっていたのだけれども。

だから、1938年昭和13年には、ヒトラー・ユーゲントの少年たちが日本を訪問し、白虎隊の墓参をしたんだ。

日独伊三国同盟締結は、1940年だったけど。

つまり、「プロイセンの傭兵が会津に派遣されてたら、君たち勝ったのにね」って気持ち?

白虎隊の隊員たちが自刃した飯盛山には、会津若松城に向かって、隊士たちのお墓が並んでいる。あの飯盛山って気が悪いよね……

1929年に「白虎隊に感激した」イタリアのムッソリーニ(ファシスト党総裁)が、「元老院とローマ市民」の名義で贈った記念碑(ポンペイの遺跡から発掘された石)が、飯盛山の白虎隊墓地にはある。

1935年に駐日ドイツ大使が贈った記念碑もある。

内容はそれぞれ「武士道の精神に」とか「若き武士をたたえる」というものだけどさ。

変な話だ。イタリアが?ドイツが? なんで?

これらの記念碑は、GHQによって撤去されたけど、今は復元されてる。

当時のプロイセンでは、極東のJAPANから傭兵依頼が来たってことが、結構ニューズになってたんじゃないの?

「ごめんね、傭兵を送れなくて」という気持ちがあったのかも。

こーいうことまでは、日本史の教科書には書いてないからなあ。

映画『十一人の賊軍』は、私にとっては非常に面白い時代劇アクション映画でしかなかったけれども、その原案や小説を読んだことで、知らなかった日本の歴史の断面を知ることができました。

日本って島国だからこそ、海に囲まれているからこそ、どうしようもなく、世界の風が吹き込んで来るんだね。

たとえ鎖国時代だろうと。

限定的開国を始めたばかりであろうと。

ほんとに私の知らないことばかりだなあ!

ボケっとしてないで、もっと勉強しないとなあ!

と、あらためて私は思ったのでありました。

71歳にもなって、こんなこと思っている自分が恥ずかしいけど、しょうがないさ、無知な私が事実で現実だもの。

この意味で、映画『十一人の賊軍』に感謝。

エンタメで教える。

エンタメで刺激して勉強させる。

これぞ、エンタメの最大の機能かもしれません。

4件のコメント

  1. お久しぶりです。先日Xでお名前を出したところフォロワーさんからご病気だと報告され馳せ参じました。お加減は如何でしょうか。

    拝見する限り、思ったよりお元気そうで安心しました。( ・ᴗ・ )ホッ

    私は今X上で社会の上層(司法、立法、行政、教育、医療等)から押し付けられて迷惑なLGBTQ活動と徹底交戦しておりまして。

    藤森先生が以前言っておられたことが次々現実に起こっています。まさか、私が東大の学者をバカ扱いする日が来るとは思いませんでした。言い当てた藤森先生を紹介しただけなんですが、私のフォロワーさんから「真の賢者」の称号を付与されましたよ!。(๑˃̵ᴗ˂̵)و

    いいね: 1人

    1. お茶飲み猫さま

      お久しぶりです〜〜コメントありがとうございます。

      今ちょうど病院におりまして、3回目の化学療法を受けるのを待っているところです。迷惑だわあ、やりたいこといっぱいあるのに、ガンだなんて。

      ところで、LGBTQ活動と徹底抗戦とは。あんなん放置でいいですよ。

      昔から、一定割合は性的少数者はいるわけで、そういう人々は、そういう人々なりの世界で生きていたのですから。ギャアギャア騒ぐこともなく。

      別に今更ゴタゴタと何を言い始めてるのか、ですね。こうなると、小児性愛者ペドフィリアのP の権利も認めろ、と言いかねませんね。

      学者さんは、まあどうでもいいことを言い募って、いい子ぶりっこするのが仕事なんで。また、それを本気にする脳が緩い若い子も多いので。

      もうXには戻りませんので、たまにはこのblogにおこしください。

      いいね

      1. Xにお戻りにならないのはとても残念です。

        国内の性的少数者にとどまらず、この問題は世界規模です。すでにドイツでは今月からセルフID(自己申告による性別変更)が始まりました。ペド容認に動いています。言論統制も始まっていてX以外のSNSではトランス女性を男性だと言うとアカウントを凍結されます。イギリスでは逮捕者も出ています。今年のパリ五輪のオープニングがひょうきん族みたいだったのはクイア論者が力を持っているからです。藤森先生にはぜひとも一緒にご考察頂きたいです。

        とはいえ、まずは今は健康を取り戻すのが第一です。化学療法が抜群の効果を発揮しますように。読者一同先生の順調なご回復を願っています。

        私なんぞはご迷惑になるかと思いますが、これからも訪問させていただきますね。

        (*ᴗˬᴗ)⁾⁾ペコ

        いいね: 1人

      2. お茶飲み猫さま

        コメントありがとうございます。

        まあ、わけのわからんアイデンティティ・ポリティクスですが、自分が周囲から受け入れられないのは性的少数者だからではなくて、他人に対して迷惑かけたりしてるからじゃないか?とは考えないんだなあ。性的嗜好がどうたらなんて、本人には大きい意味があっても、大方の他人にとってはどうでもいいことだということを俯瞰もできないのですかねえ。

        なんで男性が自分は女だと言い張ってオリンピックで戦いますかねえ、女性をボコボコに殴って。

        まあ、まともに相手にすることないですよ。だいたい西欧は頭がおかしくなりつつあるので。

        ならばオリンピックは消えればいいですよ。

        いいね

お茶飲み猫 への返信 コメントをキャンセル