生命は蛋白質の存在様式ってわかる?

「生命は蛋白質の存在様式」と言ったのは、エンゲルスだそーだ。

エンゲルスって、あのエンゲルスなんだろうか。

マルクスの同志のエンゲルスなんだろうか。

出典は知りません。

つくづく思うね。

63歳ともなると、面白いことなんか、ほとんどない。

TVドラマで「逃げるは恥だが役に立つ」は面白いし、ガッキーは可愛いが、原作の漫画は読んじゃったし、展開が見えれば、もういいっす。

ぶっちゃけて言えば、年を取ると、胸はずむこと消えるね。

そうなのよ。幻想が消えるからね。

それでも残るのは、この世界を理解したい把握したいという欲望だけ。

この世界を把握するには、人文学系アプローチや、社会科学系アプローチとかあるけど、私に決定的に欠落してきたのが、理科系アプローチだ。

死ぬまでに「理科」をやらないとあかん。

私は生まれ変わって、この面倒くさい人間の生を繰り返す気は金輪際、断固として「ない」。

だから、生きているうちに、認識を広げ深めて、理解して、解脱したいんよ。

スパーンと解放されて、この世界を上から広々と、下から広々と、横から広々と、斜めから広々と、背後から広々と、裏から広々と、いろんなレヴェルで見物したいんよ。

身の程知らず?

無理?

身の程知らずだろうが無理だろうが、もう、それしか面白くないの!!

で、もろもろ「わかっちゃったああ〜〜」という気分になって、サッパリと別次元に行ってですねえ、もうこの世には戻ってこない。

人類の世界は、頭が悪過ぎ。野蛮過ぎ。残酷過ぎ。ややこし過ぎ。時間がかかり過ぎ。時間と空間に束縛され過ぎ。

こんな世界で何度も転生していたら、悪い頭が一層に悪くなる。

だから、解脱する。キッパリ。

ということで、先日10月31日月曜日は、三重大学工学部大学院博士課程前期の院生さん向けの「生産管理特論2」というクラスの聴講に行ってきた。

この科目は、三重大学名誉教授で元同僚の渡邊明先生のご担当科目である。

この科目のクラスに、「東京アイン・ランド読者会」のメンバーの光井かおりさんが招聘されて、講演なさると聞いた。

無料で。なんと奇特な。

で、光井さんのご講演を聴きに三重県津市まで出かけた。

光井さんは薬師丸ひろ子と同年の研究者である。薬師丸ひろ子より理知的な美女である。

創業1678年の大阪に本社を置く某老舗製薬会社と三菱化学が合併してできた某有名製薬会社の創薬基盤研究所の研究者である。

光井さんは、チームを率いて「創薬」の先端研究をなさっておられる。

10月31日のご講演題目は、「創薬と蛋白質」である。

例によって、ご講演内容を、ここでポイント・フォーム形式で紹介しちゃう。

ただし、理系知識もセンスもless than zeroの私の覚え書きだから、間違って理解してることも多々あると思う。

ともかく、現代の「薬品」は、いかに生成されるか、それには蛋白質の形が核心なのよ、というお話である。

(光井かおり氏ご講演内容の覚え書き始め。括弧内記述は私の勝手な感想)

⑴ 蛋白質は多種多様で、種類は数万から数十万とある。

⑵ 人間の細胞の数は32兆個ある。そのひとつひとつの細胞に100億個の蛋白質がある。つまり、われわれの身体は、みな蛋白質でできている。

(その蛋白質が変性し、機能が変化することこそ生命活動だから、「生命は、蛋白質の存在様式」というエンゲルスの言葉になる)

⑶ かつては、薬というものは、症状を抑える効き目のある薬草とかであった。

⑷ 錬金術で薬になる金属を探すという方法も採られた。

(金の粉末飲むといいとか、水銀飲めばいいとか?)

⑸ 何千万もの化合物を片端から試す(screening)という方法も採られた。

⑹ ここ20年ぐらいの薬品の作り方というのは、酵素(こうそ)の形を見て、そこにハマるものを作るという方法である。こういう薬を分子標的薬と言う。

⑺酵素つーのは、わけのわからん健康食品のことじゃない。酵素とは、体内における蛋白質の多種多様な機能のうちの、代謝などの化学反応を起こさせる触媒である。細胞内で情報を伝達する。酵素も蛋白質である。

⑻たとえば、頭痛薬というのは、痛みを産む酵素を作らせない化合物のことだ。花粉症は、ヒスタミンが細胞膜の受容体にくっつくことから症状が出るんだけど、これをくっつかないようにさせれば、症状は出ない。

⑼  つまり、細胞内で情報を伝達させる酵素という蛋白質が、切れたり、何かとくっついたりすることを邪魔する=阻害すれば、症状は抑えられる。薬というのは、特定の蛋白質の作用を邪魔する「阻害剤」なんよ。

われわれの身体が蛋白質でできていて、われわれの存在様式は蛋白質の変化なのだから、その蛋白質の変性を阻害すれば、病気は消える。

ただし、蛋白質は種類が多種多様だから、どの蛋白質のどのような変性が問題なのかを把握するのも大変だ〜〜

⑽ ともかく、その酵素という蛋白質の形を把握して、切れたりくっついたりしないようにすればいい。つまり、形の凸凹にカチッとはまる化合物を作れば、凹凸がなくなるんで、ポケットが埋まるんで、受容体がなくなるんで、その蛋白質は、切れたりしないし、何かをくっつけたりしない。

それも、ある特定の酵素(という蛋白質)の形にのみガッツリとハマる化合物を作らないといけない。他の無害な酵素の邪魔するような汎用性のある化合物を作っちゃいけない。

(11)こういう薬品を作ることを、structure-based drug designと言う。構造に基盤を置いて薬をデザインするってことやね。

(すっごい発想なんじゃないの?)

(12)具体的に、どうするかっていうと……まずは、その酵素(という蛋白質)の形、構造を見ないといけない。だけど、蛋白質は目に見えない。どうするの?

(13) まず、その特定の酵素(という蛋白質)の遺伝子の配置を見る。こーいうことは、レントゲンさんが目に見えないものを見えるようにするX線を発見してくれたんで、見えるようになった。

(14)その特定の酵素(という蛋白質)の遺伝子の配列が見えたら、目印をつける。で、昆虫とかの細胞に、その酵素というか蛋白質を放り込む。そうして、その酵素というか蛋白質の遺伝子の精製をする。それを結晶化する。その結晶によって、その酵素というか蛋白質の形が見える!

なんで、こーいうややこしいことをするかと言えば、結晶化すると、炭素や窒素などの原子や、原子間の距離もわかるから。

原子間の距離がわかれば、形の凸凹にピッタリはまるはずの化合物の酵素(蛋白質)の凸凹に対する結合具合、水素結合具合がわかるから。

今のところは、この「結晶構造解析」に勝る方法はない!

(15)このように、X線で解析して、同じ分子が規則正しく並んでるものを出して、原子の配置を把握して、その位置をグラフィックソフトで描く。

これを「構造を解く」と言う。X線構造解析ですね〜〜〜

目に見えない細胞を構成してる100億個の多種多様な蛋白質のなかの、ひとつの蛋白質(酵素)の構造をクリアに見るためには、その遺伝子配列を見て、配列で不安定な部分は切っちゃって、その他の安定した遺伝子に目印をつけ、それを精製させ、結晶化させ、結晶を得て、その蛋白質(酵素)の構造を見るというプロセスですが……

(こう書くのは容易だけど、サッパリわからんよね)

(遺伝子の配列で不安定な部分を切るって、鋏で切るわけじゃない。遺伝子に目印をつけるって、赤いボールペンで印をつけるわけじゃない。精製するって、どうすることを精製するというのかも、よくわからない。あーた、ほんと、いろいろわからなかったよ、私は)

(16)でもってですねーーその酵素というか蛋白質の原子の配置=位相をグラフィックソフトに描いてできた図というのは、あくまでも、人間の目に見えるように表現したものである。

(つまり、実体的にそういう形になってるわけじゃないんだよね。人間の目で見えないものを、あえて 便宜的に表現しただけなんよね。記号でしかないのね。記号内容は、実体は、別のものなのね。人間の目に見えるような形にしたということであってさ、形という概念ですら、ほんとは人間仕様かもしれない)

(17) ここまで来たら、その蛋白質(酵素)の形が把握できるので、その形の凸凹にガッチリはまる化合物を片端から試せばいい。

(これもさあ、鍵穴にはまる鍵みたいなイメージでとらえちゃいけない。化合物が、その蛋白質の凹凸というか、ポケットにはまるのは、「水素結合する」ということであるのだからして)

(18)日本には兵庫県の相生市の山の上にすっごいX線研究所がある。Spring-8という研究所。「8」というのは、8ギガエレクトロンボルトってことだって。意味不明。

放射光施設と自由電子レザーSAKURAの両方ある研究所は、世界でも、ここだけ。

すごい大量のX線放射によってでしか得られない構造解析は、この研究所でやってもらう。

(レントゲンさんによるX線発見から、このSpring-8までの歴史のヴィデオを見せてもらったけれども、すごいねえ……)

(19)ともかく、今は、世界中で製薬系化学者や科学者が、このようなStructure-based drug designに勤しんでいる。論文も生産されている。最も権威ある 科学論文誌のNatureにも載っている。

(20)が、論文というのは、その時点で、それまでわからなかったことの多くのことのうちで、わかったことを書いているのであって、真実を書いているわけではない。

(21)でもって、論文というのは、肝心要のことは曖昧にしておくものである。

たとえば、実験結果により、このようになりました、という新しい知見が書いてあっても、どんな実験方法を使ったかは書いてあっても、その知見にいたるまでの実験の手順や条件の詳細が書かれているわけではない。それは論文の字数制限のために省略されたのではない。

この論文の著者たち(理系はチームで研究するから)にとって、その知見に至った方法の条件や具体的技術を、他の研究者たちに安易に安直に気楽に利用されちゃ、かなわん。

そりゃそうね。

で、論文を読むときは、どこが曖昧に書かれているのかを探ることがポイントとなる。

そここそが、その論文の見えない肝だ!

(それはわかる気がするなあ。そういうことは、あると思うなあ。人文系や社会科学系論文でも、研究者は自分の論文のほんとうのソースというか、参考にした論文とか研究者には言及しないという傾向があるからね。それに言及したら、自分の論文は単に先行研究の整理確認でしかないので、大学院生の修士論文になっちゃうんで)

(以上、光井氏の講演内容の覚え書きおわり)

上記の点以外に、光井氏は、 Nature誌に2016年8月に受理された”Structure-based discovery of opioid analgesics with reduced side effects” という論文について説明してくださった。

これは、Structure-based drug designの最先端のサンプルであり、成功例報告だからさ。

この論文は検索すればPDFで読めますんで、ご興味のある方はどーぞ。

「副作用が軽減された麻酔薬(阿片系鎮痛剤)の構造に基づいた発見」

モルヒネとかが、阿片様合成麻酔薬だよね。

でも、これは副作用が強い。依存性が出てくる。体内に長くとどまれないので、疼痛を抑えるために多量に投与したりする。多量に投与すると心臓に負担がかかり、死にいたったりする。

だから、昔は癌の末期は悲惨だった。痛くて苦しくても医師は多量にモルヒネ打ってくれない。死んじゃうからって。

死んでもいいんで痛みを取り除いて欲しいのにね、患者の立場からすれば。

今は、ペイン・クリニックが向上して、癌の末期も過酷な痛みに苦しむことはなくなった。良かった、良かった。

ともかく、もっといいのは、中毒性(依存性)のない、身体に負担の軽い麻酔剤に鎮痛剤。

従来の阿片系麻酔剤や鎮痛剤のオピオイド受容体(そういう酵素というか蛋白質)に適合する化合物を特定できれば、麻酔薬や鎮痛薬の副作用を抑えられる。

このオピオイド受容体という「膜蛋白」の構造解析は、かつては不可能と思われていた。

膜蛋白つーのは、細胞と細胞の間にあって、個別の細胞を区切る膜(細胞膜)の中にある蛋白質のこと。この細胞膜つーのは油であって、膜蛋白は油の中で浮いてる。

つまり、この膜蛋白を構造解析するには、油の中で浮いている蛋白質を水で溶かさないといけない。つまり、特殊な界面活性剤が必要。

だから、膜蛋白の構造解析は無理と思われていたんだけど、今は、その新しい特殊な界面活性剤が作られて、膜蛋白であるオピオイド受容体の構造解析ができるようになった。

で、この論文の著者たちも、オピオイド受容体の凸凹というかポケットに水素結合できる化合物を特定する前に、オピオイド受容体の形をわかろうと、前述のプロセスを踏んだんですねえ……

で、やっとオピオイド受容体と水素結合できる化合物を発見し、実験したら、依存性も低く、長く効果が持続することが判明した。

この実験では、ネズミに「従来の麻薬投与組」と「オピオイド受容体ポケット水素結合可能化合物いり新麻酔薬PZM21投与組」に分けて、55度にしたホットプレートを歩かせるみたいなことする。

尻尾に針刺したり……

実験動物さんたち、大変だ……

で、最後に、このような成果を上げ地道に努力して、人類社会に貢献する科学者の条件として、光井氏は以下の能力をつけるように、大学院生に力強く伝えた。

①チームで研究するんだし、コミュニケーション能力をつける。

②類推する能力をつける。

③自分につっこむ能力をつける。自分の考えに固執しない。

④待つ能力をつける。簡単に結果は出ない。

⑤感情をコントロールして正直でいる能力をつける。感情は選べる。支配欲で自分が動いていないか、幼児性ではないか、自分をチェックする。

⑥生活能力をつける。自分でできることは自分でやる!!

以上の6点は、科学者でなくとも、必要な大事な能力だよね〜〜

難しいことではあるけれどね〜〜

ということで、慣れない理系講演を理解しようと必死になった90分だったので、私はくたびれた……

翌日の11月1日は、一層にグッタリしてしまった。

でも、こうして脳を刺激しないと、いけないんだ!!

はあ……蛋白質の変化が生命そのもの。

生命とは、蛋白質の存在様式。

私を構成する32兆の細胞の、それぞれの細胞の中にある100億個の蛋白質の変化が、私を決定する。

光井氏は、この蛋白質の変化というものこそ、仏教で言う輪廻転生ではないかとおっしゃった。

????

うーん……私の内なる蛋白質よ、私をどこに連れて行くの?

自分の蛋白質と意思疎通をしたいもんである。

まことに理科の面白さに目覚めさせられた体験であった!

光井さん、お疲れさまでした!

ありがとうございました!

このようなご講演を聴く機会を提供してくださった渡邊明先生、ありがとうございました!

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